はるの魂 丸目はるのSF論評


時空ドーナツ

SPACETIME DONUTS

ルーディ・ラッカー
1981


 ルーディの処女長編だぜりんりん。なんとアメリカでは絶版だって、もったいないねえ。どうして日本のSF界はルーディが好きなんだろうね。実のところおいらも大好きさ。
 1972年、ロックとドラッグが世界を救うと信じられていた日々、ルーディ・ラッカーは数学者としての道とSF作家としての道を同時に歩もうとしていた。彼が書いた初の長編SFは、本人いわく史上初のサイバーパンク小説である。ルーディに1票。
 ルーディは、次元の概念を語るのがうまい。それは、32歳の年に書き始めた本書でもいかんなく発揮されており、よーくわかる。4次元的存在について知りたければ、本書を読めばいい。難しい解説書なんか捨ててしまえ!
 もちろん、ルーディ・ラッカーの代表作は、「ソフトウェア」「ウェットウェア」などであり、そのぶっとんだ概念とロジックと言葉に、多くの少年少女中年壮年が頭をなぐられてきた。しかし、一方で、彼は数学者であり、人工生命研究や四次元概念の解説などでも知られている。もはや入手困難だと思うが、アスキー出版局からは「人工生命研究室 on WINDOWS」なんて本が出版され、付録の3.5インチフロッピーディスクには、DOSベースの人工生命ソフトウェアが入っていて、私もずいぶんと遊んだものである。
 本書では、人工知能が知性(創造性、意識…)を持つにはどうすればいいのか、が語られる。その方法は、小さくして、すると、大きくなって、そして、また小さくなって、元に戻ると、内側に外側を、外側に内側を抱え込むから、それで意識が発生する、というもの。何を書いているか分からない。うーん、そうだね。本書を読めば分かるよ。分からないことも。
 ところで、わが家には1998年10月15日付け発行の早川SF文庫「時空ドーナツ」が2冊並んでいる。どちらも古本ではなく、新刊として買ったものだ。98年から現在まで私は引っ越しをしていない。だから、同じ本を2冊買う理由が見あたらない。どちらも同じ時期に買ったものだろうか、それともどこかの私が間違って置いていったのだろうか、それとも、増幅したのだろうか。なぜだろう。とりあえず、2回読んだことは間違いないようだ。どちらもページをめくっている。中の早川書房広告がどちらもない。でも、今回読んで、初めて感が強いのはどうしてだろう。本当に、この私が読んだのだろうか。どこの私が読んだのだろう。6年前の私は、どこにいるのだろう。ね。

(2004.3.4)



TEXT:丸目はる
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