はるの魂 丸目はるのSF論評
猫と狐と洗い熊
CATSEYE
アンドレ・ノートン
1961
最初、この作者に出会ったとき、名前から男性作家だと思っていた。今や、ノートンといえば、PC界の大物の名前になってしまったが、私にとってノートンは、SF作家のアンドレ・ノートンである。
本書は絶版になって久しいが、創元推理文庫SFから1973年末に初版が出され、78年3月に4版を数えている。ちなみに、そのときの値段が220円となっている。
遠い未来、2大勢力が星系間の戦争を続けている時代。暮らしていた牧畜の星を追われた青年は仕事にもことかく二等市民として日々を過ごす。割り当てられたペットショップの下働きの仕事が、彼を自立と誇り、苦痛と喜びに満ちた事件に巻き込んでいく。
地球産の2匹の猫、2匹の狐、1匹の洗い熊と自然状態で精神感応することができる主人公トロイ・ホーラン。やがて、彼は、人間と動物の立場やあり方について考えることになる。そして、彼らとともに生き抜こうとする。
おとぎ話である。SF風の。熱線銃や過去再生機なんていうのが出てきたりする。
精神感応に動物の知能向上である。
ジュブナイルにしては、ちょっと難しいかも知れない。
主人公の周りに登場する「敵」のあるものは明らかに悪者だが、あるものは、悪いともいいともつかない。
しかし、表現されている都市やペットショップや自然環境や異世界の風景はとても写実的で美しく、魅了される。
そのなかを、猫が、狐が、洗い熊が、そして、人間が走り回り、飛び回る。
素直な気持ちで読める一冊。
(2004.7.4)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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