はるの魂 丸目はるのSF論評


第五惑星から来た4人

FOUR FROM PLANET 5

マレイ・ラインスター
1959


 東京創元社1965年5月初版、1977年7月24版! 当時の価格240円。もちろん消費税など影も形もない。12歳か13歳の頃に買った文庫本の1冊である。当時は、それほどお小遣いもなく、田舎の本屋は3軒で、SFの数はほんのわずか。タイトルと価格と本の厚さを見比べながら、どれを買うか迷った記憶がある。本書は、買ってからおそらく1回読んだだけで、今回再読するまで30年近く放ったままになっていた。
 時は流れる。

 ということで、タイムトラベルものである。
 主人公がタイムトラベルをするのではなく、迎える方である。
 内容としては、「なぞの転校生」(眉村卓)と、「創生期機械」(J.P.ホーガン)を足したようなものを思いっきり50年代風にした感じ…かあな。

 50年代終わりのSFということで、冷戦の世相を強く反映している。
 アメリカ、ロシア、反アメリカ連合の3どもえのにらみ合い。核戦争への恐怖と一触即発の危機。微妙なバランスの中、途方もないエネルギーを発して「宇宙船」が南極に墜落する。
 そこから出てきたのは、現代のどの言葉とも違う言語を話す人間の子ども4人。常温超伝導を使った様々な道具。
 彼らを真っ先に見つけた南極で隕石の軌道計算を行うアメリカの研究者ソームズ君、南極基地を取材に来ていた美人記者のゲイルさんは、彼ら4人を助けようとするとともに、彼らが母星である過去の第五惑星に連絡をつけたら、地球を侵略するに違いないと、彼らの通信手段を破壊する。
 アメリカ軍は、彼らを隠し、技術を手に入れようと試み、ロシアはアメリカを疑い、マスコミは、異様な姿のエイリアンが侵略を開始したと騒ぎ立てる。

 本書は、相互確証破壊の状態で“新しい技術”というひとつの要因がいかに世界を危機に陥れるかというテーマでソームズ君を悩ませ、苦しませる。
 と、同時に、地球規模に広がった商業主義的マスメディアが大衆と政府に与える影響の大きさについて、皮肉を交えながら書き表す。
 このふたつにおいて、本書は今も読む価値がある。

 ただし、ストーリー展開は、ホーガンも真っ青のご都合主義である。
 ソームズ君がゲイルさんへのつのる想いの間に繰り出す、驚異的な推理力と発明力と行動力は驚異的である。ソームズ君は知らず知らずに世界を救うのである。まいっちゃうなあ。
 まさしく、古き良き、50年代、60年代。
 主人公が私事や本当に自分がやっていることが正しいかどうか悩みながらもきっちりと世界を救うあたりに、ウルトラセブンや仮面ライダー、鉄腕アトムなど60年代、70年代前半の日本の特撮、アニメに流れるものと通じるものを感じてしまう。
 絶望と希望が相反しながら同居する時代だったのだ。


(2004.8.30)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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