はるの魂 丸目はるのSF論評
宇宙の孤児
ORPHANS OF THE SKY
ロバート・A・ハインライン
1963
小学生のころ、図書委員をしていた。ねらいは、すでに表の本棚に出なくなった古い本を読むためだ。背のほつれたSFや推理小説を探しては、読んでいた。
本書は、矢野徹訳の「のろわれた宇宙船」として、1967年に偕成社のSF(科学小説)名作シリーズで登場し、1972年に福島正実訳の「さまよう都市宇宙船」として、あかね書房の少年少女世界SF文学全集に登場している。
どっちを読んだのか、どちらとも読んだのか、今となってははっきりしないが、強く印象に残っている作品である。
その後、1978年にハヤカワ文庫SFで「宇宙の孤児」として出ており、高校生のころ、この文庫版を購入し、記憶を新たにしたものだ。
遠い昔に反乱があり、パイロットのいなくなった巨大な宇宙移民船。誰も操縦するものがなく、宇宙船はさまよっている。そこが宇宙船であることを知らない人々は自給自足の生活を続ける。世界は限られており、外に星があることも知らない。重力の弱い階上に暮らす双頭のミュータントとの争い。
竹宮恵子の「エデン2185」が本作とつながるかどうか分からないが、巨大な宇宙船の中で暮らす人々というアイディアは多くの人を魅了した。惑星の周りを回るスペースコロニーではなく、移民船であり、旅をしていることと、乗客たちが広大な閉じた空間で暮らすという不思議なバランスが見当識喪失のような不思議な感覚を読むものに与える。
宇宙船の中で、主人公は旅をし、ミュータントと交流し、外を発見し、世界を見いだす。
あまりにも予定調和の大団円だが、ジュブナイルは潔くあってよいと思う。
ちなみに、本書が雑誌で発表されたのは1941年。第二次世界大戦の頃であった。
その頃に、遠い宇宙を書いていたのだ、この御大は。
(2004.09.25)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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