はるの魂 丸目はるのSF論評


人間以上

MORE THAN HUMAN

シオドア・スタージョン
1953


「スラン」「オッド・ジョン」「アトムの子ら」など、新人類テーマの一冊。同じように、「新人類」アニメがブームとなる前後の1978年にハヤカワSF文庫化している。発表年は「アトムの子ら」と同じ年である。
 しかし、本書は他の作品とはずいぶんと趣を異にしている。
 本書に登場する新人類は、ホモ・ゲシュタルト「集合人」である。瞬間移動ができる者、念動力が使える者、テレパシー、超常的な計算能力、それらをつなぎ合わせる能力を持つ者…、彼らひとりひとりは、生活能力がなく、白痴であったり、発育不全であったり、捨てられた子どもであったりする。しかし、彼らが出会い、お互いを「自分」として認識することでホモ・ゲシュタルトになるのだ。まったく違った思考体系、行動体系。しかし、生存し、繁栄したいという生命の本質は彼らも同様に持っている。
 ひとりひとり=部分が生き残るため、ゲシュタルト(形態)として存在し続けるために、彼らは彼らができることを続ける。
 本書は、3部構成になっており、ゲシュタルトの形成まで、ゲシュタルトの危機、そして、人類とゲシュタルトの接点を描く。一貫してスタージョンが描くのは孤独と他者との関わりである。
 誰かに自分の存在を認めて欲しい。誰かに触られたい。誰かとコミュニケートしたい。誰かと関わりを持ちたい。関わりを持った過去を大切にしたい。  孤独の寂しさを知らないことは、孤独を知ったあとで味わう寂しさよりも不幸なことだ。
 実に切ない話である。
 きっとSFでなくてもよいのだろうが、SFだからこそ、ホモ・ゲシュタルトとしての人類を描くことができ、その孤独を通して、孤独の意味を知ることができるのだ。
 寂しいときに読むとよい大人向きの作品である。

 ちなみに、手元にあるハヤカワSF文庫の表紙は、赤ん坊の顔が破られたような野中昇氏の作品で、ちょっとホラーっぽい。私はホラー作品が実に苦手である。たしかに、映画にしたらホラー作品になるかも知れない。しかし、内容は決してホラーではない。

国際幻想文学賞受賞




(2004.10.4)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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