はるの魂 丸目はるのSF論評


タイム・パトロール

GURDIANS OF TIME

ポール・アンダースン
1960


 ポール・アンダースンの「タイム・パトロール」シリーズ邦訳第一冊である。本書には、4作品が掲載されており、1955年から60年にかけて発表されたものである。
 1924年生まれのアメリカ人、マンス・エヴァラードは30歳。1954年にタイム・パトロール隊の一員になる。1894年のロンドンで5世紀に起きた時間犯罪を解決し、紀元前6世紀のペルシャで歴史の歯車に誤って取り込まれた未来人を救い出し、13世紀のアメリカ大陸では、あるべき未来を守るために中国「元」の探検隊を失敗に導き、2万年前のヨーロッパで遊んでいるうちに誰かの手により変えられ、紀元前3世紀以降のパトロール隊さえ存在しなくなったすべての未来の歴史を元に戻すため、時間を飛び回って活躍する
。  難しいことを言ってはいけない。タイム・パラドックスもまあだいたいなところだ。

 気にするな。

 X−MENやスーパーマンのようなアメコミの世界だ。ただ違うのは、実在の、あるいは、伝説の歴史上の人物たちが次々と登場することだ。タイムトラベルものは、歴史の「もし=If」を楽しむための道具である。歴史は次々に書き変わり、そして、元に戻され、あるいは、そのままになる。主人公は、普通の人間でも、舞台がすごいのだ。

 楽しめ。

 作者も楽しみながら書いている。これをきっかけに、歴史に関心を持つもよい。ちょっと、歴史書を読んだり、歴史の教科書を読むのが楽しくなる。  頭の中で、世界が変わる、広がる。

 歴史を遊べ。伝説を歩け。

 なお、本書の続編が、なぜか知らぬが1990年になって邦訳されている。しかし、邦訳2冊の間にも、「タイム・パトロール」シリーズは続いている。どうして、第4冊目だけが邦訳されるにいたったのか、謎である。誰かの時間的いたずらか?



(2004.10.13)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
(スパム防止のため、全角表記にしています。連絡時は、半角英数にてお願いします)

作家別テーマ別執筆年別
トップページ