はるの魂 丸目はるのSF論評


リングワールドふたたび

THE RINGWORLD ENGINEERS

ラリイ・ニーヴン
1980


 ニーヴンという作者は、本当にSFが好きで、自らも熱烈なSFファンであり、SFファンを大切にする作者である。
 私のようなSFが読めればなんでもいいというファンと違い、SF界には、その設定が科学的に成立するかどうかを検証する人たちがいる。彼らのおかげでSFは科学とフィクションの境目を自由に旅しているのだが、時として、作品の穴をその評価が定まった後に見つけるときがある。名著“リングワールド”もまた、その特異な宇宙構造に関心が集まり、人工のものであれ、その構造を維持することが実に難しいことを解き明かす人たちがいた。彼らの多くの指摘と声を受けて、終止符を打ったはずの“ノウンスペースシリーズ”の、しかも、集大成と言える“リングワールド”の続編が、前著から10年後に出されることとなった。
 これもひとえに、熱烈なSFファンと、それに応えるニーヴンという作者の人柄のゆえんである。

 前著では、あきれんばかりに広大なリングワールドのほんのわずかな領域を旅しただけであったが、今回は、もっと広い範囲を旅し、そこに生きる、人類と同じ祖先を持つものたちの様々な社会、生態と出会うこととなる。
 主人公は、前著と同じ地球人ルイス・ウー、クジン人スピーカー(話し手)あらためハイミー、それに、パペッティア人のネサスの配偶者となったハインドモースト。
 ルイスとハイミーを誘拐同然で旅に連れ出したハインドモーストの目的は?
 軌道がずれはじめたリングワールドの謎とは?
 そして、リングワールドにいる30兆人の知性を持つ人々の運命は?

 今回も、リングワールドの驚くべき光景が広がる。しかし、前作ほどに驚きはない。当たり前である。きつい書き方をすれば、あとから理屈をつけた前作の謎解きにすぎないからだ。意外性も、おもしろさも、前作を超えてはいない。では、つまらないかというとそんなことはない。並のSFには引けを取らないであろう。  なにぶんにもリングワールドは、地球300万個分の広さがあるのだ。それだけの広さと、30兆の知性生命が暮らす陸続きに、今、立っていて、危機にさらされていて、それを何とかするために旅をしている。そう考えただけで、ふるえが来ないか? この設定ゆえに、リングワールドはSFファンを惹きつけてやまないのである。

(2004.11.5)





TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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