はるの魂 丸目はるのSF論評


中性子星

NEUTRON STAR

ラリイ・ニーヴン
1968


 ノウンスペースシリーズの短編集であり、表題作はヒューゴー賞受賞作。
 食い詰めた宇宙船乗り、誰もいない惑星で滅んだ支配種族の遺物を探す異星生物学者、パペッティア人の秘密を握った海賊、たいくつのあげく未知の危険を求めるフラットランダー、ふとした自然の気まぐれから宇宙の果てまで逃げることになった男…。
 ヒーローのいないスペースオペラである。「リングワールド」を読んだら、ぜひ、本書にも手を出して欲しい。いくつかの「なぜ」が解き明かされることだろう。

 どれも楽しんで読んだが、「リングワールド」とは直接関係のない「狂気の倫理」「恵まれざるもの」をおすすめの2作品としてあげておきたい。
「狂気の倫理」は、「タウ・ゼロ」(ポール・アンダースン)と同様に、止まれなくなった宇宙船の話である。追う船、追われる船に乗っているのはそれぞれひとり。ただ50年間宇宙船で逃げ続けた男の物語である。ひとりの男の心理描写だけで宇宙を描くのは作者の力量が問われるところだ。そのブラックユーモアな落ちも含めて楽しんで欲しい。
「恵まれざるもの」は、砂漠の中でまったく動かない生物なのに、脳が非常に大きく知的生物であると考えられているグロッグという毛むくじゃらの異星人とフラットランダー(地球人)の商売人の話である。コミュニケーションのとれない異星人とどうやってコンタクトし、何を売りつけるのか? その代償は? 動きのない異星生命を相手にした話である。これも、なんと特殊な条件での作品だろうか。ぜひ読んでみて欲しい。

ヒューゴー賞受賞

(2004.11.17)





TEXT:丸目はる
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