はるの魂 丸目はるのSF論評
わが名はコンラッド
THIS IMMORTAL
ロジャー・ゼラズニイ
1966
原題は、「この不死なるもの」か「ここにおわす神々」って感じかな。中編では「わが名はコンラッド」のままである。
これも高校生の時に買っている。表紙は角田純男さんので海岸にオリーブの輪をかぶったはだかの子どもが4人にて、海に巨大な透明の球が浮かんでいる、全体に青いイメージだ。
地球は最終核戦争「三日戦争」によって壊滅してしまった。現在地球には400万人程度しか生存しておらず、突然変異によってまるで神話世界のような様々な形態の人間、一部の動物が暮らしていた。
三日戦争以前、人類は、宇宙に進出していたが、三日戦争によってすべての植民地で人類は生存の危機に立たされた。それを救ったのが、異星人ベガ人たちである。彼らは植民地や地球の生命を救い、地球外の人類には生活の場所を提供した。これまでもベガ人はさまざまな異星人たちを吸収してきたのだ。
しかし、地球では200年以上に渡ってベガ人の介入を拒み、地球外の人類に帰還を呼びかける帰還主義者たちがいた。彼らは、人類が人類のまま地球で暮らすことを求めたのだ。
ここに、ひとりのベガ人が本を書くために地球の各地を回るという名目で地球に降り立った。案内役に選ばれたのは、突然変異により事実上の不死となったコンラッドである。彼は、名前を変えながら様々な生を過ごし、現在では地球美術遺蹟史料保存局局長の職にあった。彼は醜く、力強く、そして、天才であった。
ベガ人の案内として選ばれたコンラッドのほか、案内役やボディーガードとしてかつてコンラッドがよく知っていた帰還主義者や暗殺者、生物学者、妻や愛人が同行することとなった。
ベガ人の真の目的は本当にただ本を書くためだけなのか、それとも噂されているベガ人が地球を買収するための下調べなのか、それとも別の目的があるのか?
荒廃し、異様な生物や社会を旅しながら、それぞれの思惑が展開する。
そして、旅の過程を通して、コンラッドの人と歴史が少しずつ明らかになっていく。
たぶん、高校生の頃、おもしろくなかったのだろうなあ。ちょうど、日本ではニュー・ウェーブSFが盛んに紹介され、出そろったころである。ニュー・ウェーブってちょっくら小難しいんだ。たんなる冒険がなんか人生や精神、人間のありようを比喩的に、暗喩的に描いていることになっているから、小難しいんだ。それがおもしろいところでもあるんだが、背伸びをしたがる小難しいことを言いたがる若造には、かえってその小難しさの後ろにある単純なおもしろさがつかめなかったりするんだろう。
今、素直に「わが名はコンラッド」を読んだら、素直におもしろかった。
そういう小難しさを忘れて、ただ、ストーリーを追いかける。
ああ、書き方/読み方によっては、「わが名はコンラッド」はハードボイルド作品だ。ただ、ハードボイルドの主人公が貧乏な私立探偵ではなくて「地球美術遺蹟史料保存局局長」なんていう地球の要職にあるから惑わされるだけなんだ。
そう思って読むと、本書「わが名はコンラッド」はおもしろい作品だ。
ところで、以下はネタ晴らしです。え、目にはいるって?
すいません。どうしても言いたい。
テーマは、星を継ぐもの! だ。
ネタ、ばれてないってか。
ヒューゴー賞受賞!(ニュー・ウェーブの時代だ)
(2005.4.20)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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