はるの魂 丸目はるのSF論評
ビースト・マスター
THE BEAST MASTER
アンドレ・ノートン
1959
アンドレ・ノートンの動物感応ものジュブナイルのなかでも古い方の作品である。登場するのは、アフリカン・ブラック・イーグル、ミーアキャット、大型化した砂漠のネコ。感応するのはアメリカ・インディオの末裔で近年終結した異星人との宇宙戦争にコマンド部隊ビースト・マスターとして戦い、生き残った地球生まれの青年ホースチン・ストーム。
ビースト・マスターとは、動物と交感し、彼らとともにある舞台として、彼らを使い、さまざまな工作活動を行う調獣士のことである。
地球は戦争の最後の頃、異星人クシックスにより破壊され、多くの地球人コマンドは精神を病み、同盟の植民惑星へと散っていった。しかし、ストームは、そのような精神障害のあとはみられず、無事、動物たちとともに惑星アルゾルへの移住を勝ち得た。
彼が精神を維持していたのは隠し通した目的があったから。かつて、両親を殺した宿敵を見つけ出し、その罪を購わすこと。
惑星アルゾルで、馬牧場の調教をしながら、現住のノービー族などと新たな旅に出るストーム。しかし、その惑星には恐るべき秘密があり、そして、見つけたはずのストームの宿敵が、はからずも彼を助けてしまった。混乱する中で、動物たちとともに冒険を続けるストーム。惑星の秘密とは、そして、宿敵の正体は?
という感じで、ちっとも女っ気のない作品である。まったくといっていいほど女っ気はない。青年、異星人、乱暴な西部の男たち、ストームを無条件に助けてくれる気さくな男たち、未開の異星部族…。青年西部劇であり、青年成長譚である。心の傷、親、敵、親友、友人、未知の世界がそろっている。だけど、そこにはまったく「恋愛」がない。これは女性作家だからだろうか?それとも書かれた時代だからだろうか。
驚くほどの女性の欠如。ノートンの作品にはそういうのが多い。
さらにノートン作品の特徴として、動物がいる。動物たちと交感し、仲間として、あるいは耳目や手足として、動物と接する。
動物好きにはたまらない作品である。もっとミーアキャットなどが活躍して欲しいと思うのだが、残念なことに2匹いたミーアキャットのうちの1匹は途中で退場してしまう。そこが一番残念だが、続編でちょっと嬉しいこともあるので、よしとしよう。
(2005.5.28)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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