はるの魂 丸目はるのSF論評
ビースト・マスター2 雷神の怒り
LORD OF THUNDER
アンドレ・ノートン
1962
本書は、ビースト・マスターの続編である。発表年では「猫と狐と洗い熊」の間に入る作品であり、ビースト・マスターシリーズは、「鷹とミーアキャットと砂漠ネコ」という感じだろうか。
前作で死んだミーアキャットは、しかし、生前、相方であるヒングに子を孕ませていたようで、本作品でヒングは子育てに忙しく、ちっとも働いてくれなかった。だから、本作品では、鷹と砂漠ネコだけがビースト・マスターのホースチン・ストームを支えてくれる。
ここからは、前作品のネタ晴らしになってしまうのだが、前作品で出会った異父兄弟と義理の父のもとで、ストームは新しい暮らしをはじめようとしていた。ところが、現住のノービー族が突然、奇妙な行動をはじめる。争いごとの多いノービー族同士も含め、すべての原住民たちが、いっせいに宗教的行事のため移動をはじめたのだ。なにやら「雷神」に関わることらしい。前作品で発見された、先史宇宙文明の遺跡と関わりがあることだろうか? この動きに緊張を高める入植者たち。折しも、戦後の元兵士たちを輸送する宇宙船が遭難し、彼らの聖地付近に不時着したため、それを救出したいと星系外から権力を持った男がやってきて、捜索の協力を求めた。これができるのは、ノービー族との深い関わりを持つことができるストームたちしかいない。
しぶしぶ引き受けたストームたち。
ノービー族と植民者たちの緊張の中、彼の行動如何では全面戦争に発展しかねず、また、彼の行動によっては、緊張を緩和することができるかも知れない。インディオとしての感性で、ノービー族の宗教的価値観を尊重しながら、彼は雷神の秘密をあばき、遭難者を救出することができるのか?
という物語である。もちろん、今回も女っ気はまったくない。
どこにもない。
主人公は、悩み、戦い、疲れ、苦しみ、次々と襲いかかる難題に立ち向かうだけである。たよりになるのは、ノービー族の親友と、鷹と砂漠ネコ。
ジュブナイルの通過儀礼物語である。
さらりと読めるのが特徴で、ロールプレイングゲームにすることも簡単そう。
こういうのをさらりと書くのがノートンのいいところだろう。
難しいSFに飽きたとき、ちょっと気晴らしになる作品。
(2005.5.28)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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