はるの魂 丸目はるのSF論評


ゲイトウエイへの旅

THE GATEWAY TRIP

フレデリック・ポール
1990


 ゲイトウエイ総集編である。正シリーズである4冊の主人公ブロードヘッドはまったく出てこないが、彼と後に関わる数人や、正シリーズでエピソードとして語られる人たち、出来事が短編連作として1冊にまとめられている。
 ブロードヘッドの視点ではなく、ゲイトウエイ世界を淡々と語る者の視点であり、いつも混乱していたブロードヘッドとは違って、とても整理され、読みやすい。ゲイトウエイ世界はこんなところだったのだということが、思い出され、そして、その美しさ、人類の限りない欲などを楽しむことができる。
 本書を読めば、ゲイトウエイ世界と、人類がヒーチー遺蹟に出会い、ゲイトウエイを発見し、人口問題を解決、ヒーチーそのものに出会う直前までのおおまかなストーリーを知ることはできる。そして、ゲイトウエイの調査船に乗り、宇宙の様々な姿をともに歩くことができる。どこにいくか分からないがどこかには行って、そして生きて帰れるかどうか分からないが、だいたいにおいて帰ってくることができて、もしかすると宝物を手に入れることができるかもしれない旅。その魅力は本書でも存分に書かれている。本書を読んで、ゲイトウエイ正シリーズに入るのもよいだろう。しかし、ゲイトウエイシリーズのおもしろさ、特異さは、ブロードヘッドという主人公の性質によるところが大きいので、できれば、正シリーズを先に読んで欲しい。もっとも、ブロードヘッドの性格や行動が嫌いで、途中で正シリーズを放り投げた人は、本書をお薦めする。ブロードヘッドが出ていないゲイトウエイ世界を楽しめるのだから。
 なお、ゲイトウエイについては、このほか、「SFの殿堂 遙かなる地平2」(ロバート・シルヴァーバーグ編)の中に、1作品が掲載されている。こちらは、シリーズ後半とうまく連動した作品で、実に読み応えのあるゲイトウエイジュブナイルになっている。気になる方はぜひ。


(2005.6.6)





TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
(スパム防止のため、全角表記にしています。連絡時は、半角英数にてお願いします)

作家別テーマ別執筆年別
トップページ