はるの魂 丸目はるのSF論評
大宇宙の墓場
SARGASSO OF SPACE
アンドレ・ノートン
1955
太陽の女王号シリーズで邦訳されているのは2冊のみ。本書「大宇宙の墓場」と「恐怖の疫病宇宙船」である。本書は昭和47年、1972年に初版が出ており、私は第8版1979年発行のものを手元にもっている。この2冊のイラストは、表紙、見開き、挿絵のすべてを松本零士氏が書いている。
本書は、アンドレ・ノートンの作品の中ではめずらしく最初から動物が活躍するわけでもなく、主人公のパートナーでもない。主人公は、通商員(トレーダー)の訓練所を出たばかりの青年。職種と乗務する船の乗組員との相性から自動的に勤務先を選択する「サイコ」によって、大企業船ではなく独立した自由貿易船「太陽の女王号」に乗り込むこととなったデイン・ソーソンである。
だから、舞台は「大」宇宙と、人類が植民していたり、植民はしていないが知的生命体がいる惑星。自由貿易船は、ある惑星や航路への通商権を得ては、惑星から惑星へモノを仕入れ、モノを売り歩くのだ。通商員は、船の中での仕事はあまりないが、一歩惑星に降りたら、自由貿易船の最大の利益を引き出すべく、その惑星の知的生命体と交渉し、宝を見つけ、利益を獲得しなければならない。そこに求められるのは冷静な判断力と交渉力、そして、危険と利益を見分けられる知恵と知識と経験である。
比較的初期の松本零士氏のキャプテン・ハーロック的なイラストとあいまって、少年の私はわくわくしながら読んだのであった。
今読み返してみると、まさしくジュブナイル冒険活劇である。科学的な根拠のことは忘れていい。そんなものはこのスペース・オペラ、宇宙の西部劇の前にはどうでもよくなるのだ。
古き、よき時代のSFである。いい時代だったのだ。
本書は、題名にあるとおり、宇宙船の墓場、宇宙船が難破し、失踪する宇宙のサルガッソー惑星の話である。調査局のオークションで競り落とした安い惑星の通商権。ところがその惑星は、かつて惑星規模の戦争によって焦土となっており、ほとんど無価値な惑星であった。失望する太陽の女王号のメンバー。そこに、「先史文明」調査のために惑星まで太陽の女王号をチャーターしたいという考古学者が登場する。
惑星には秘密があったのだ。「先史文明」の遺蹟の中に生きているシステムがあった。それは、惑星に近づいた宇宙船を不時着させ、あるいは、飛び立てなくする驚くべきマシンであった。
その秘密を利用して海賊行為を働くものたちと、惑星の権利を持つ太陽の女王号のメンバー、さらには、星間パトロールまで登場し、「先史文明」の遺蹟をめぐって戦いがはじまる、というような話だ。
今やなかなか手に入らない作品だが、松本零士ファンにはおすすめのイラスト満載。
(2005.6.10)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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