はるの魂 丸目はるのSF論評
惑星ゾルの王女
ZORA OF THE ZOROMES
SPACE WAR
LABYRINTH
ニール・R・ジョーンズ
1935
ジェイムスン教授シリーズ第3弾は、「悲恋! 惑星ゾルの王女の巻」「弔合戦 惑星ミュムへの出撃! の巻」「教授危うし! 金属喰い怪物あらわる!」の3編が掲載されている。
いよいよ機械人たちの母星ゾルに到着し、その生身の王女ゾラと面会した機械化人で人類最後の生き残りであるジェイムスン教授は、その4千万年におよぶ生と冒険をゾラに話すのだった。惑星ゾルには、機械化されていないゾル人が生きている。それは、人口を減らさないための最低限の生身であり、王女もまた生身であることが義務づけられていた。
宇宙の冒険者ゾル人たちは、はて万能かと思われたが、そのすぐ近くの惑星系で、ゾル人が機械化することを教えたミュム人たちが、ゾル人をたおして宇宙の覇者になろうと野望をたくらみ、戦争状態がはじまっていた。王女の生身の恋人も、この戦いに巻き込まれていく。果敢に立ち上がる王女と、その生身の身体をおもいやる教授。今、惑星系間の宇宙戦争がはじまった! というのが、最初の2作品。
3作目は、戦争も終わり、ふたたび冒険隊を結成して旅に出た教授とゾル人達。ところが、たどりついたおもしろくもない惑星で、教授と機械化したゾル人たちは、これまでに出会ったこともない危機に襲われる。なんと金属を喰う生命体が登場したのだ。絶体絶命の教授。はたして、生還する道はあるのか!
てなもんで、表紙とイラストは、藤子不二雄氏。物語は翻訳者野田昌弘氏の例の絶好調口調ですすむ。はたして原文はどんな文章だろうと思わずにいられない「野田昌弘」節で、ジェイムスン教授も思わず口調がなめらかに「なってしまうんだなァ」。
本書のあとがきによると、邦訳されている4冊12編はアメージング・ストーリーズに掲載されたもので、最後の作品が1938年である。その後、アストニッシングに4編が発表され、これは、1940年から42年。そして、スーパー・サイエンスに5編、1949年から51年にかけて掲載され、合計21編があるという。
ちなみに、本書「惑星ゾルの王女」は1974年にハヤカワSF文庫から出されている。手元にあるのは、同年6月の第2版。1冊280円の時代であった。古きよき時代であった。
(2005.12.15)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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