はるの魂 丸目はるのSF論評


リングワールドの玉座
THE RINGWORLD THRONE

ラリイ・ニーヴン
1996


 ようやく文庫化された「リングワールドの玉座」を買って読む。「リングワールド」「リングワールドふたたび」に続く、ニーヴンのノウンスペース・シリーズ「リングワールド」の3冊目である。話は、「リングワールドふたたび」に続き、主人公も変わらずルイス・ウーである。
 1冊目の「リングワールド」で、想像を絶する世界を提示したニーヴン。その後、「リングワールド」と「ノウンスペース・シリーズ」をめぐっては、世界中で様々な角度から論じられ、科学的欠陥の指摘も多くあった。それを解決したのが「リングワールドふたたび」である。
 さて、前著でリングワールド最大の危機を脱した「リングワールド」だが、そのために選択した1兆の人々の犠牲の重みに、ルイス・ウーは押しつぶされていた。まあ、この人は、最初からずっと何かに押しつぶされていたような人なので、それほど同情的な感じではない。
 今回リングワールドに押し寄せてきた危機は、外部の侵略者である。人類、クジン人などがリングワールドをめざして艦隊を出してきた。しかし、その先遣隊はことごとくリングワールドからの攻撃にさらされる。一体誰が攻撃しているのか?

 一方、危機を脱したリングワールドの一部では、リングワールドに広く適応放散した人類種の末裔の一種属で知性を持たない「吸血鬼」が爆発的に増えつつあった。これに危機を感じた機械人種、草食巨人人種、農業人種、腐肉食人種、狩猟人種、水中人種などがこれまでにない協力関係を結び、吸血鬼人種との闘いを開始した。

 てな感じなのだが、今回のキモは、人類種の適応放散の姿である。高い知性を持ちながらも夜に行動し、リングワールドの生態系の底辺を維持する腐肉食の人種にはじまり、川の上から高い山の上まで、さまざまな人類系統が見られる。「指輪物語」に出てくる様々な人間ではない者たちを彷彿とさせるファンタジーワールドである。
 そのイメージの世界を楽しるならば、とてもおもしろい作品である。


(2006.06.21)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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