はるの魂 丸目はるのSF論評


宇宙の果てのレストラン
THE RESTAURANT AT THE END OF THE UNIVERSE

ダグラス・アダムス
1980


「銀河ヒッチハイク・ガイド」の続編である。さて、宇宙をさまよう2人の地球人と元銀河帝国大統領とその友人のヒッチハイク・ガイドライター、加えて鬱ロボットのマーヴィンとの旅は続いていた。彼らの乗船「黄金の心」号は、無限不可能性ドライブを搭載し、だから、無限に不可能なことが起こってしまうのであった。地球の秘密は究極の答え「42」に集約され、今は究極の「問い」を求めて、いや、何か求めていたっけ? そういえばこいつらどこに行こうとしているんだっけ?なのであった。
 アーサー・デントが、シリウス・サイバネティクス社の自動栄養飲料合成機に紅茶を頼んだために、彼らは再び危機に陥り、マーヴィンは五千七百六十億三千五百七十九年間気が滅入ったままで、宇宙は何度も終わってみたりする。
 舞台設定は、前作でできあがっているため、「宇宙の果てのレストラン」では、笑いの要素に全力投入されている。そうだよなあ、そんなこともあるかもなあ、未来でもみんな困ることがあるんだ、なんて、卑近で、皮肉で、すかっとする笑い。これぞイギリスの伝統といった笑いが待っている。
 2005年に公開された映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」を見た後に、本作「宇宙の果てのレストラン」を読むと、鬱ロボットのマーヴィンがぴったりはまり役だということに気がつく。あのマーヴィンが、人工知性型の戦車と戦い、銀河の果てのレストランで配車係をしているなんて!!
 そして、人類の秘密がいまときあかされる。なんだ、人類がおろかなのは、ある惑星で、もっとも不要な労働層の人間だけを集めて送り込んだからなんだ。じゃ、しかたないね。
 まあ、「宇宙の果てのレストラン」でも読んで、馬鹿笑いしているのがお似合いってところじゃない?

(2006.10.11)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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