はるの魂 丸目はるのSF論評
宇宙クリケット大戦争
LIFE,THE UNIVERSE AND EVERYTHING
ダグラス・アダムス
1982
「銀河ヒッチハイクガイド」の続編の続編。つまり第三作である。ということは、まずは、「銀河ヒッチハイクガイド」を読み、ついでに映画「銀河ヒッチハイクガイド」をDVDあたりで見て、それで、「宇宙の果てのレストラン」を読み、「しょうがねえなあ」とか言いながら、河出文庫の黄色と白の背表紙のコーナーに行って、「宇宙クリケット大戦争」なんていうふざけたタイトルの本を探すということである。もし、あなたが今読んでいるのが2006年からそう遠くない未来であれば、「銀河ヒッチハイクガイド」はそこそこの本屋さんで手にはいるだろう。大きな本屋さんだったらこの後に続く第五部までそろっているかもしれない。もし、もう入手できなくなった未来にこの文を読むとしたら、まあ、それが人生である。どうしても読みたかったら、図書館に行ってみる、古本屋さんをあさる、ネットのオークションをチェックしたり、検索してみたり、売ります買いますコーナーで高値を付けてよびかけてみたりしてみればよい。もし、あなたが知的好奇心にあふれ、それに見合うだけの才能があり、野望があれば、タイムマシン的なものを開発し、タイムパラドックスを起こさない程度の方法で、過去から入手することもできるだろう。まあ、そこまでしなくても、ちょっとした未来には、電子化されて、絶版なんて言葉が死後になっているかも知れない。そしたら、それに対するアクセス手段と、必要な対価を稼げばいいだけのことだ。
第一作では、地球が爆発した。前作では、宇宙の終わりに立ち会うことができた。今作は、それほど大層なことではない。なんといっても、クリケットである。クリケットって知っていますか? 見たことありますか? 北半球で日本と一番遠いあたりにある島国で行われているんだか、行われたことがあるんだかっていうスポーツで、ボールを投げたり、飛んできたボールを打ったり、それから、走ったりするらしい。もちろん、チームがあって、チームが勝ったり、負けたり、得点が入るらしい。
これが、銀河系規模の知的生命体虐殺に関わっているのである。その歴史の名残なのである。記憶の残滓なのである。ほら、第一作、第二作に比べるとスケールが小さいでしょ。だいたい、第二作で宇宙の終わりを目撃したんだから、それ以上すごいことなんてありゃしないんです。それなのに、主人公のアーサー・デント君は、あいかわらず、やっちゃいけないことをやったり、やらなくていいことをやったり、やらずにすめばいいにこしたことはないことをやらなければいいのにやってしまってしまったりしていたりするのである。その結果はたいていやらなかったときよりも悪くなるのだが、そうでなければ笑いがとれないのだからしかたがない。笑いをとるのはたいへんである。
読むのはあっという間なのにね。
(2006.10.14)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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