はるの魂 丸目はるのSF論評
ホワイト・ライト
WHITE LIGHT
ルーディ・ラッカー
1980
りんりん。ラッカーのデビュー長編だぜい。原題は、「ホワイト・ライト、あるいはカントルの連続体問題とは何か?」だってさ。処女長編は「時空ドーナツ」なんだけど、出版されたのはこっちのが先だ。舞台は1973年10月31日、ニューヨーク州バーンコ。主人公は、ある世界ではルーディ・ラッカーかもしれない州立大学数学講師のフィリークス・レイマン。幼い娘と愛しいが喧嘩ばかりの妻、高等数学にはまったく興味のない学生、何の楽しみもない田舎町…。彼は無限について考えていた。
無限には何種類もある、らしい。
私が住んでいる狭い世界観の中では無限は無限にすぎないのだが、もっと大きく(あるいは小さく)世界を広く広くとらえていくと、無限は様々な顔を見せはじめる。
無限のありさまについてカントルの連続体問題は何かを言っているらしいよ。
そのことを解き明かしたいレイマン君は、ちょっとぼんやりさん。
ある日、墓場で軽くあっちの世界に行ってしまう。
そこでゴキブリのような別世界人を道連れに旅をしたり、アインシュタインやカントルやヒルベルトにも出会ったりする。そうして、なんとかこっちの世界に帰ってきた彼は、あっちの世界で得た無限の操作によって、世界を変える超物質を生み出す力を得たのだった。って、こう書くとなんかテクノSFっぽいでしょう。んなわけあるかい。
ま、とにかく無限だよ。
なんとなく、無限ってすごいなあ、とか、数学って変なことやっているなあ、とか、そういうことがわかったような気になるところが、ラッカーのおもしろさ、さ。
そうそう、家族はやっぱり大切だよね、っていう話でもあったりする。
べいべい。
追記 ラッカーはスタニスワフ・レムの「泰平ヨン」シリーズがお気に入りだったようです。本書「ホワイト・ライト」文中にちょっとだけ出てくるのだ。
(2007.1.27)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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