はるの魂 丸目はるのSF論評


異次元の陥穽
GALAXY OF THE LOST

グレゴリイ・カーン
1973


 グレゴリイ・カーンことイギリス人SF作家E・C・タブによる、キャプテン・ケネディ・シリーズ第一弾である。万能の地球人キャップ・ケネディと、繊細なエンジニアの指と高重力惑星で生まれ育った万力の体格を持つサラトフ、天才的科学分析力を持つルーデン、透明化の特殊能力を持つパイロットケミルの4人が地球勢力と宿敵デルタン勢力との緊張が高まる中に起こる事件を解決する。第一巻は顔見せを兼ねながら、この世界とキャプテン・ケネディとゆかいな仲間たちの紹介だ。
 地球勢力圏の辺境エリアで次々と輸送船が救難信号だけを残して消えていった。後には、宇宙船の破片もなんの痕跡も残していない。宇宙海賊の仕業とも疑われたが、その手並みの良さは尋常ではない。
 伝説の古代文明種属の科学力の残存によるものか? キャプテン・ケネディは次にねらわれそうな輸送船に身分を偽って搭乗し、その身の危険を冒して事件の解決に乗り出した。
 そこには驚くべき謎が。
 そして、ケネディの知恵と勇気とど根性、クルーの機転で危機を脱出、無事事件は解決するのであった。しかし、多くの謎を残したまま…。

 ということで、アメリカン・コミックばりの4人の特殊技能クルーによるスペース活劇である。あとがきによれば、かのペリー・ローダンシリーズがアメリカで英訳され人気を博したことに出版社がアメリカらしいSFヒーローの復活を求めた結果登場したらしい。そして、作者名は秘したままシリーズは重ねられたが、後に、E・C・タブであることが判明し、イギリス人SF作家であったことにさらなる驚きを招いたらしい。
 ということで、今や絶版のキャプテン・ケネディの紹介と相成った。


(2007.04.20)




TEXT:丸目はる
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