はるの魂 丸目はるのSF論評


ブラックカラー
THE BLACKCOLLAR

ティモシイ・ザーン
1983



x  西暦2370年代初頭、地球民主帝国の植民星系近くでライクリル星人と最初の接触があった。当初は交易関係にあったが、その間にライクリル星人は地球民主帝国侵攻を計画し、40年後に彼らは地球民主帝国を攻撃した。地球側は惑星26の版図を持っていたが、ライクリル星系は150の惑星世界を治めていた。その圧倒的な力の差の前に抵抗むなしく人類はライクリル星人に支配されることとなった。ライクリル星人は、人類の裏切り者を忠誠審査にかけ、再教育して各人類惑星を支配させた。各惑星の抵抗勢力は連絡を絶たれ、人類の裏切り者政府によって弾圧を受け、地下に潜っていた。戦後約30年。ライクリル星人は別の星系と新たな戦端を開き、その拡張政策を進めていた。
 そして地球の地下組織は、新たな戦いをはじめようとしていた。35年前に占領されたプリンリー星系には、人類の希望となる秘密が残されており、その情報を得ればライクリル星人に戦いを挑むことができる軍事力を手に入れられるかも知れない。さらに、プリンリー星系には、名将がおり、人類の特殊部隊ブラックカラー軍団が生き残っているかもしれない。地球の地下組織は、ひとりの若者アレン・ケインを訓練し、なんとか地球を脱出させプリンリー星系に潜入させることに成功した。そして、ブラックカラー軍団とケインが出会ったことで事態は急展開する。
 ブラックカラー軍団。手裏剣やマキビシを使いこなし、ヌンチャクと自らの肉体を武器に戦う人類最強の兵士達。肉体の強靱さだけでなく、精神的な強さ、戦略、戦術、兵器操作に優れた特殊部隊。黒装束に身を包んで闇夜に紛れて行動することから、ブラックカラー軍団と呼ばれていた。
 そして彼らは、地球以上に厳しい占領統治下のもと、まるで赤穂浪士のように自らを老いた思い出にひたる元軍人の老人たちとして振る舞い続けていた。30年以上に渡って、時が来るのをただひたすら待ち続けてきた。必ずいつか、戦いを挑むべきタイミングが来るはずだと。
 それが、アレン・ケインの持ってきた情報であったのだ。
 ついに、ブラックカラー軍団が立ち上がる。

 じゃじゃーん。どどーん。ばばーん。

 カラテ・ニンジャである。無口で、ブラックカラーである上司の命令には絶対の男の集団。彼らは目的を果たすためには手段を厭わない。しかし、仲間を守る意識はなみなみならぬものがある。その帰属意識こそが、彼らの強さの秘密でもあったのだ。
 プリンリー星系、アルジェント星系と、真のブラックカラー軍団の行くところに事件あり! いざ、人類の復興をめざして究極の兵士達は戦うのである。

 赤穂浪士のエピソードが語られるあたり、しっかりとした日本かぶれである。ヌンチャクを使って戦ってはいるが、別に「武士道」をひけらかすわけでもなく、変な日本語や日本式がでるわけではないので、安心して読める。作品としては、ミリタリーSFの範疇に入るであろう。笑えるのは、ブラックカラー軍団を設立する前に、アーマースーツ軍団も作られたようで、これが見事に失敗した様が語られる。あれ、とか、あの、作品とは違うのだよと、楽屋落ちとして遊んでいるのだろう。そのあたりのサービス精神が旺盛な作家である。
 調べてみると、スターウォーズの外伝小説や「超戦士コブラ」シリーズを書いている作家であった。読んでないなあ。


(2007.05.31)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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