はるの魂 丸目はるのSF論評


エンディミオンの覚醒
THE RISE OF ENDIMION

ダン・シモンズ
1997



いやあ、何度読んでもおもしろいものはおもしろい。再読だが、新鮮な気持ちで読むことができた。

「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」「エンディミオンの覚醒」の四部作もいよいよ佳境。すべてが語られ、そして宇宙が変わる。
ハイペリオンシリーズの前編を通じてひとつのテーマであった、「愛は宇宙の物理的な力」がいよいよベールを脱ぐ。
そう書くと、このシリーズがとたんにうさんくさく感じられるが、そんなことはないのが、ダン・シモンズの力量である。
そこにラリー・ニーヴンのリングワールドシリーズがあり、ジェイムズ・ブリッシュの宇宙都市シリーズだろうか、ジョン・ヴァーリーの八世界シリーズもあるかもしれない。それまでに登場したSFのガジェットが次々に新しいイメージを帯びて登場し、ひとつの物語に収斂されていく。その奥の深さには舌を巻くしかない。
そのなかでの「愛の力」である。
そりゃあ、あなどれないよ。

キリスト教と仏教の対話、新しい価値観の提示、それをSFのみがなし得る手法で提示する。荒唐無稽だけれど、精神の力を信じようと思わせる読後感がある。
それ以上は書けない。書きたくない。読んだ方がいい。
付け加えることなんてなにもない。

前作「エンディミオン」でもひどい目に遭ってばかりのロール・エンディミオン君であるが、今回はもっともっとひどい目に遭う。まあとにかく、ロール君のアイネイアーを守ろうとする思いと、そのために発揮する絶望的な力には感動するよ。えらい!
君こそ、ヒーローだ!

月にロール&アイネイアーとハートマークで落書きしたい気持ちだよ。



(200.7.31)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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