はるの魂 丸目はるのSF論評


銀河遊撃隊
STAR SMASHERS OF THE GALAXY RANGERS

ハリイ・ハリスン
1973



「宇宙兵ブルース」のハリイ・ハリスンがお送りする、スペースオペラの一大傑作が、本書「銀河遊撃隊」である。「スカイラークシリーズ」をしのぐ知性と行動力に満ちた主人公たち! 信じられないほどの新たな発見で宇宙に飛び出し、ベムを退治し、美女を救い、虐げられた異星人を救出する正義! 「レンズマンシリーズ」をしのぐ宇宙戦争の数々。正義と悪の真の決着をつけるときが来た! 宇宙に生まれたのは「銀河遊撃隊」。その驚くべき兵力、戦力をもっても戦えないほどの強大な力に、宇宙的知性が、宇宙的能力を使って銀河遊撃隊をサポート、そして悪は葬り去られるのである!
 わずか1冊で、スカイラークシリーズ、レンズマンシリーズばかりではなく、あらゆるスペースオペラのすべてを読み通すことができるすばらしい作品が、本書「銀河遊撃隊」である。
 それだけではない。今まで秘密とされていたスペースオペラの真実がすべて明らかにされている。なぜ、異星人は英語を話すことができるのか? どうやって氷詰めになった美女は復活するのか? 大発見はどうやって行われるのか! 業界がこれまで明かさなかった真実がそこにある。
 1973年、ウォーターゲート事件に代表されるように、世界の真実を暴くことが求められていた時代だからこそ世に出ることができた作品である。
 あまりにもすごい作品であるが故に、そのほかのスペースオペラ作品群が売れなくなることを危惧し、出版社は絶版を決意! それでも、昭和55年に初版を発行し、昭和60年には6刷を数えてしまった。今や、まぼろしの作品として手に取るのも危険視されている禁断の書でもある。
 私はある収集家が誤って氏の収集作品(整理番号がマジックで記入されていた)ものが、大手の古書店に流れ、あまつさえその危険性に気づかなかった古書店員が100円+消費税にて放出していたのを発見し、震える手で購入したのである。
 ところが、である。2005年に、表紙を変えて再版されているのである。表紙には現代的な若い娘さんの絵が描かれている。作品紹介は、「傑作ユーモア・スペースオペラ」としている。なるほど、そういうかわしかたがあったか。真実を冗談として隠す手法は今に始まったことではない。まして、時代は1970年代以上に真実を隠しやすくなっている。大量の情報を流すことによって、情報の質を相対的に低下させ、散逸させるのである。
 危険な作品である。心して手にするように。



(2007.12.8)



TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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