はるの魂 丸目はるのSF論評
スター・ゲート
STAR GATE
アンドレ・ノートン
1958
惑星ゴースは、人類型のゴース人が自らの文明、文化を開き、暮らしていた。そこに、いつか宇宙船に乗った地球人がやってきて、彼らの高度な科学技術の一部を与えゴース人の世界を変えていった。地球人たちはゴース人から星貴族と呼ばれていたが、なかにはゴース人と結婚し、子をなす地球人もいた。物語は、ほとんどの星貴族が彼らが乗ってきた宇宙船で帰ってしまった直後に幕を開ける。地球人たちは、いくつもの人類居住型惑星にたどり着いていたが、あるとき異星文化、文明に、その異星人たちの科学技術よりも発展した技術などを導入することで社会を大きく変えてしまうことは罪悪であるという価値観が広がったのである。すでに社会が変質してしまい、地球人と共存していたゴース人たちにとっては途方に暮れるような事態が訪れた。
ここに主人公のキンカーが登場する。彼は、田舎の荘園主の後継者であり、荘園主の祖父はすでに死の床にあった。キンカーの両親は早くに死に、祖父が生きている今はキンカーの叔父が事実上領地を仕切っていた。地球人がいなくなったあとのゴースは混乱し、戦乱が起きていた。その影響はキンカーの荘園にも訪れており、叔父は明らかに正当な後継者であるキンカーの権利を侵そうとしていた。死の床にあった祖父はキンカーを呼び出して告げる。「おまえは、地球人との間の混血である」と。もし、混乱期でなければ、それは問題にならなかったであろう。しかし、混乱した今、混血であるキンカーはその正当性を疑われ、領地内に混乱をもたらすかも知れない。叔父はそれを知って、キンカーと争ってでも領地を奪う気でいるらしい。キンカーは祖父の命により、争いを避けるため、伝説の秘石を引き継ぎ、彼の忠実な友である猛禽類のヴォークンと、使役獣であるシムとともに領地をひとり離れたのであった。行き先は、ゴースにわずかに残った地球人と混血たちにかけられた招集場所である。
残った地球人たちは、あまりにもゴースになじんでしまったため惑星を離れることはできず、しかし、このまま「この」ゴースに留まることもできないため、スター・ゲートを作って、パラレルワールドのゴースを目指すことにしたのであった。
キンカーは、この星貴族たちと運命をともにすることにした。しかし、降り立った「次の」ゴースには大きな問題があったのである。
タイトルは「星の門」なのであるが、舞台は「惑星ゴース」とそのパラレルワールドである。ジャンルとしては「平行宇宙」ものなのだが、ストーリーの背景には、混血が可能なほどの類似した人類型種属がいくつもの星系でそれぞれの文明・文化を生んでいることや、地球人が先進人類として異星人に影響を与えることの是非などが問われている。テーマとしては「異文化の出会いと文明導入による課題」であり、文化人類学的な課題である。
とはいえ、話はジュブナイルみたいなものである。なんといっても作家はアンドレ・ノートンなのだ。少年少女たちをわくわくさせるのが趣味みたいな作家である。本書「スター・ゲート」は安心して読める少年の成長を描いたエンターテイメント作品である。
表紙や挿絵は岡野玲子が書いている。それをみると、中世的ファンタジーという感じでもある。
(2008.1.31)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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