はるの魂 丸目はるのSF論評


くたばれスネイクス
HOKA!

ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
1983



 本書「くたばれスネイクス」は、1951年に第一作が書かれ、1957年に6編が掲載された「地球人のお荷物」の続編にあたる短編集である。いわゆる「ホーカシリーズ」であり、地球人の「物語」に熱中しては、現実の中に虚構を取り入れてしまう才能をもった歩く力持ちのテディベアである惑星トーカのホーカ人と地球人が巻き起こすどたばたコメディSFである。本書「くたばれスネイクス」に掲載されているのは4編で、うち3編は1955年〜57年に書かれている。最後の「ナポレオン事件」のみが1983年に書かれており、これによってホーカシリーズが復活。1950年代の作品もめでたく日の目を見たのであった。
 さて、そこで最後の「ナポレオン事件」を取り上げてみよう。どんなに危機が起ころうとも、ホーカ人同士では殺し合うことがなかった惑星トーカ。なのに今、ホーカに世界大戦の危機が! 陰では異星人による陰謀が繰り広げられていたのだ。しかも、これまでの危機をすべて乗り越えていた地球人の全権大使であるアレックスは、ホーカ人の宇宙社会でのレベルを引き上げるために奮闘中。妻のタニはついにアレックスにSOSを出す。
 さて、ナポレオンをかかえ、ドーバー海峡をはさんで一発触発のホーカ人の戦争危機は回避できるのか? というのが今回のお話。
 地球を離れることができないアレックスがトーカ星に密航するためにとった手段は、不定期貨物船「千年鳥」のオーナー兼船長ブロブとの友情。部ロブは、放射性物質のゆるやかな核分裂作用によってエネルギーを得る生命体で、日本文化に傾倒し、茶の湯をたしなみ、畳にすわって富士山を描いた掛軸の下の、水盤に生けられた百合と石をみて瞑想することをアレックスに勧めるような通人でもあった…。
 どうです。読みたくなるでしょう。
 タイトルの「くたばれスネイクス」は野球のお話。野球の世界にひたってしまったホーカたち。それを聞きつけたサレン人の野球チーム「スネイクス」が銀河系シリーズの対戦相手としてホーカの「テディーズ」に対戦を求めてきた。このサレン人、トーカ星でかつて覇権を争ってきた知的は虫類原住民スリッシーそっくりである。これはただならぬ予感。そのアレックスの予感はもちろん的中。自らの職と命を賭けて戦う羽目に…。
 ということで、気楽に楽しくホーカたちと遊べるのであった。


(2008.03)

TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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