はるの魂 丸目はるのSF論評


反逆者の月3 皇子と皇女
HEIRS OF EMPIRE

デイヴィッド・ウェーバー
2003



 ペリー・ローダンにはじまった「反逆者の月」は、「反逆者の月2 帝国の遺産」でスター・ウォーズに変わると同時に「王の誕生」物語となり、本書「皇子と皇女」は予定調和的に「王の子どもたち」の物語となって終息に向かうのであった。

 今回の主役は、皇帝コリンの双子の皇子と皇女であるショーンとイシス。帝国中枢ですくすくと育ったふたりは、帝国海軍に入り、特別扱いされることなく、軍人として育っていった。帝国は順調に体制を整えられていたが、有無を言わせず帝国の進んだ科学力と独自の文明に取り込まれてしまった地球と地球人たちには、不満を持つ者も少なくなかったのである。ひそかに陰謀がたくらまれていた。それはあまりにも周到で密やかだったため、誰にも気づかれることなく進んでいた。その最初のターゲットは、ショーンとイシス。彼らを葬るための陰謀は成功したかに見えたのだが…。

 ということで、若い皇子、皇女と、その友人たちがある惑星で戦争を行うはめになったのだった。すべては「生き残り、帝国に復帰する」ため。そこは、産業革命直前の状態が長く続く宗教的国家体制の国。鉄砲はあれど、戦車はない。主な武器は騎馬と刃物。古典的な陸上戦である。戦争オタクの作者デイヴィッド・ウェーバーが、宇宙船ではなかなか描けない陸上戦を激しく活写する。

 さて、ふたりの運命はいかに。そして、帝国の運命はいかに。

 ということで、本作では、皇帝となってしまったコリンの活躍が見られない。皇帝になるとそうそう気楽に動けないのである。残念! ペリー・ローダンならば、いつも前線にいそうなのに。その代りに子どもたちが頑張る。このあたりは、レンズマンシリーズの終盤に近いかもしれない。スター・ウォーズも、よく考えれば「子どもたちの物語」だしなあ。
 何も言うことはありません。前作を読まれた方はそのまま最後まで読み通しましょう!


(2009.05.20)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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