はるの魂 丸目はるのSF論評


最後の星戦 老人と宇宙3
THE LAST COLONY

ジョン・スコルジー
2007



 第1作、「老人と宇宙」のジョンが帰ってきた。しかし、彼は緑色をしていない。新しいコロニーで、妻と子とともに平和な日常を送っている。仕事は小さな村の監査官。まあ、もめごとの調整役といったところ。口の汚い秘書のサルヴィトリとのかけあいと、面倒な村人の対応を除けば何事もない。その彼の元に、元の上司がやってきて、別のコロニー開拓を率いて欲しいという。これまで、植民はすべて地球から送られてきた。しかし、植民星が二次植民の権利を求めてきたのだ。とはいえ宇宙の植民星はほぼすべてどこかの異星種族に押さえられており、新たな植民星の発掘や譲渡(奪い取り)は容易ではない。ある異星種族より「譲られた」植民星に10の人類植民星からそれぞれ同数ずつを出してこの譲られた星「ロアノーク」を開拓することとなった。文化も、価値観も、歴史的背景も異なる10の植民星出身者をたばね、成功させること、この政治的にも困難な課題を最高責任者である「行政官」として引き受けさせられ、妻、子とともに、第二のふるさとを離れることになった。
 そうして、頭を痛めながらも移民船に乗ってロアノークに到着したが、そこは、予定されていた「ロアノーク」ではなかった。
 偽ロアノークは、宇宙規模の陰謀、策謀、作戦に巻き込まれ、すべての電子機器を使用禁止に追い込まれる。偽ロアノークの植民者たちとジョンの家族は、偽ロアノークの自然環境、人類の属するコロニー連合、さらには、コロニー連合よりもはるかに強力な異星種族連合であるコンクラーベを相手に生き残ることができるのか?
 ということで、今度は「三国志」みたいなものである。「三国志」のおもしろさは、司令官(王)と将軍たちの個性と知恵比べたる戦略にあるといってもいいだろう。二者関係ならばたいていの場合は大が勝つ。しかし、三者関係になると、一番弱いはずのものが大を覆すことも可能になる。だから「三国」を語る必要があるのだ。コロニー連合とコンクラーベの戦いとして語ればじつにつまらないものになるだろう。力の差が歴然で、お話しにならないのだ。しかし、ジョンとロアノークの存在がそのすべてを変える。
 第1作は、老人版「宇宙の戦士」、第2作は「フランケンシュタイン」というか、SF、怪獣、特撮映画と小説のオンパレード、そうして、第3作は「三国志」。絶妙のストーリー展開、博学、博識、かつマニアックな作者の力量に感銘。



(2009.10.31)




TEXT:丸目はる
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