はるの魂 丸目はるのSF論評


聖者の行進
THE BICENTENNIAL MAN AND OTHER STORIES

アイザック・アシモフ
1976



 創元推理文庫SFより1979年3月に初版が出ている。中学校3年生が終わる頃である。高校に上がる前の春休みに読んだ記憶がおぼろげながらある。
 とても気に入っている短編集である。受験が終わってほっとした時期に読んだということもあろうし、当時としてはアメリカでの初出からあまり日をおかずに出版されていることから、「古さ」を感じさせない作品群であったことも、強く印象付いているのだろう。
 1975年に書かれた「篩い分け」では、2005年に、「地球の人口は六十億に達していた。飢饉がなければ七十億を数えていたに違いない」と記されている。時は、「公害」から「環境」に問題意識が移り始めた時期であり、「環境」問題の中心に人口爆発があることが意識された。同時に、1974年の第一次オイルショックと同年に起きた地球規模の穀物不作による食糧危機と飢餓の発生が、アシモフにこの作品を書かせたのかも知れない。
 さて、私がもっとも気に入っているのは「バイセンテニアル・マン」である。1993年にロバート・シルヴァーバーグが長編化し、1999年には映画化された「アンドリューNDR114」の元となった短編である。あるロボットの200年に渡る「人間になりたい」を描いた作品として、「人間とは」「人間ではないとは」を考えさせた作品である。
 この作品は、ロボットものとしてアシモフにヒューゴー賞、ネビュラ賞をもたらしたが、ロボットシリーズの集大成とも言っていい。
 もうひとつ、「三百年祭事件」も捨てがたい。こちらは、アメリカ建国300年での記念式典をテーマにしたロボットものである。1976年は、アメリカ建国200年であり、その前年に発表されたミステリ作品でもある。こちらもある意味で、「人間とは」「人間ではないとは」を問うた作品である。
 ロボットが、ロボットであることの意義や意味を考える。このような作品群を見ると、その後、アシモフがロボットものを、ファウンデーションシリーズに統合していくことも納得がいく。


(2010.05.02)




TEXT:丸目はる
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