はるの魂 丸目はるのSF論評
白鹿亭綺譚
TALES FROM THE WHITE HART
アーサー・C・クラーク
1957
霧の都ロンドン、その裏通り、テームズ川が少しだけ見える場所にパブ白鹿亭がある。毎週水曜日になると常連の科学者や編集者、作家のたぐいが集まり、いつものように誰かの話に耳を傾ける。それは世界中にいるマッドサイエンティストのとっておきのエピソード。音を完璧に消す装置を発明した結果は…、動物の行動をコントロールできるようになると…、脳波を記録する装置は…、究極の軍事コンピュータは…、世界制覇を妄想した科学者は…、熱帯で見つかった奇妙な植物の正体は…などなど。
歴史の陰に失われていく変わり者の科学者と、その驚くべき発明の数々。
クラークだけが知っている、地球の科学界の真実。
SFがユーモアやウィットなどと両立する訳がない!
だからここに書かれていることは、掛け値なしの真実だ。
でなければ、SFが荒唐無稽さと両立することを、あのまじめなクラークが証明することになってしまうではないか!
そんなはずはない。
断じてない。
高校の頃だなあ。洗練された連作短編というものを読んで、ため息をついたのは。
今読んでも、まだおもしろい。
(2010.05.15)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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