はるの魂 丸目はるのSF論評
スターシップ2 海賊
STARSHIP:PIRATE BOOK TWO
マイク・レズニック
2006
元共和宙域軍艦にて、現在逃亡中の老朽艦セオドア・ルーズベルト、通称テディ・Rは、元中佐にて、敵味方ともに知らぬ者はなき軍功をなしとげ、さらには、逃亡兵として名高いコール船長により、辺境宙域をのんびりと航行していた。クルーのほぼすべては元航宙軍兵士であり、規律も、コール船長への帰属意識も高く、申し分ない。
問題はただひとつ、「海賊」のやり方である。
船を動かすにも、停泊するにも、クルーに食べさせるにも、給料を払うにも、病院に運び込むにも、必要なのは金。これまでは、軍人として、軍艦として、金の心配をすることはなかった。しかし、なんとかして金は必要である。
コールにとって、大切なのは、生きのびること、多くの血が流れる戦争を終わらせることであって、結果的に逃亡することになった共和制政府を倒すことでも、敵であるテロニ連邦を破滅させることでもない。
だから、金のために海賊になるからといって、誰でも襲うという訳にはいかない。
どの勢力や種属であれ、一般市民は襲えない。軍艦や商船などの艦艇も襲えない。むやみな略奪はしたくない。
どうすればいい? 答えはひとつ。海賊は一般市民でも、軍艦や商船などのまじめな仕事をしているわけでもないし、積んでいる財産は略奪品だから、海賊を襲えばいいんだ!
でも、海賊のやり方って、どんなんだっけ?
そこで、これまで航宙軍でトリッキーな作戦をこなしてきたコール中佐がとった手は?
今度の交渉相手は、軍人ではない。海千山千の「裏稼業」の人間たちである。海賊、故買商、賞金稼ぎ、保険会社などなど、経験や対応方法も豊富な人間や異星人たちを相手に、コール中佐は、前作にもましてトリッキーな手を打ってくる。
さすが、マイク・レズニックである。
楽しく読める。
ロイス・マクマスター・ビショルドのヴォルコシガン・シリーズを思わせる、コール中佐の口八丁手八丁。違うのは、「かっこよく」である。現代のヒーローかくありき、という感じかも。
(2010.05.15)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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