はるの魂 丸目はるのSF論評


小鬼の居留地
THE GOBLIN RESERVATION

クリフォード・D・シマック
1968



 好きな作家なのだが、本書「小鬼の居留地」は初読。たぶん。たぶん、古本屋で入手。たぶん。ぼんやりしている。
 超自然現象学部のマックスウェル教授は、物質転送機での異星への調査旅行から地球に戻ってきた。しかし、教授は物質転送機の問題なのか、予定していた目的地ではない星に到着し、そこで、秘密のミッションを与えられてきたのである。帰ってきた教授は、自分がひとりではないことを知らされる。先に、もうひとりのマックスウェル教授が地球に帰ってきていたのだ。当初の予定通りの目的地に行き、そして帰ってきた。自分がふたり! しかも、その先に帰ってきたマックスウェル教授は事故で死に、結果的に、マックスウェル教授はひとりとなっていた。物質転送機がこのようなトラブルを起こしたことはかつてない。保安局も調査に乗り出した。
 もちろん、マックスウェル教授に咎がある訳ではない。彼は自分の部屋、自分の大学に戻ることにした。過去からやってきた穴居人や「おばけ」の友人たち、新しくできた女友達とともに、マックスウェル教授のなぞを解こうとするマックスウェル教授。エールビール好きの小鬼の友人をはじめ、古い時代には幻想と思われていた地球上の存在、異星の存在が混在する世界で起きる、牧歌的なほんわかしたどたばたコメディー。
 ファンタジーとSFの中間領域にあるような作品である。
「居留地」におしこめられた小鬼=ゴブリンというのはちょっと哀しい。
 気のいい、かつ、気の短いゴブリンがつくるエールビールっておいしそうだな。

(2010.07.01)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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