はるの魂 丸目はるのSF論評


第81Q戦争
INSTRUMENTALITY OF MANKIND

コードウェイナー・スミス
1979



 人類補完機構ができる以前の地球、それ以前の第一次宇宙時代、そして、人類補完機構の創出期などが掲載されている、コードウェイナー・スミスの短編集である。これをもってほぼすべての「人類補完機構」ものが翻訳されたこととなる。翻訳出版されたのは1997年。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が放映され、話題になった翌年のことである。
 1982年に「鼠と竜のゲーム」が人類補完機構の短編集「THE BEST OF CORDWAINER SMITH」の約半分を翻訳出版された。その後、5年開いて1987年に長編「ノーストリリア」が翻訳出版。予定より10年遅れて1994年に、短編集「THE BEST OF CORDWAINER SMITH」の残りが「シェイヨルという名の星」として翻訳出版された。それでも、初期の作品などが残されていたが、「エヴァンゲリオン」が「人類補完機構」という名称を使ったものだから、コードウェイナー・スミスに注目が集まり、おかげで、1997年に本書が登場することとなる。
 表紙には大々的に「人類補完機構」の文字が躍り、タイトルも「第81Q戦争」と、「エヴァンゲリオン」を彷彿とさせるところもある。
 いやいやいやいや。ま、売れる分はいいけれど。
 ちなみに、「第81Q戦争」はスミスが14歳の頃に書いた作品だそうである。「人類補完機構」前史も前史。かけらもないストーリーである。おもしろいけれど。
 翻訳してくれてありがとう、である。なんと言っても、作品数が極端に少ないので、できるだけたくさん読みたいのだ。
 でも、「人類補完機構」シリーズや、コードウェイナー・スミスのすごさを知りたい向きに、本書を1冊目としてはおすすめできない。やはり、「鼠と竜のゲーム」「シェイヨルという名の星」の短編集を読み、「ノーストリリア」を読まれるのがよかろう。
 他のシリーズなら、どれから、というおすすめはしないが、コードウェイナー・スミスに関してだけは、掛け値なしに、この順番である。
 私は、日本の翻訳出版順で読んだが、今ならば、この順番をおすすめしたい。もちろん、今回の再読では、その順番で読んだ。よかった。

 あ、もちろん、その後で、本書「第81Q戦争」をお忘れなく。


(2010.11)




TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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