はるの魂 丸目はるのSF論評
ケスリス
THE FADED SUN KESRITH
C・J・チェリイ
1972
色褪せた太陽3部作の1冊目、初読。先日古書店で入手。チェリイは好きな作家だが、食わず放置の作品。読んでよかった。「デューン」のフレーメンのような人たちの話。
フレーメンにあたるのがムリ族。人類とは異種族だが、人類にとてもよく似た種属である。
簡単なストーリーは、商人であるレグル族と流浪の戦士であるムリ族は傭兵関係を永年結んでいた。正確に言うとレグル族の各家(国家のようなもの)とムリ族の各部族がそれぞれ傭兵関係を結んでいた。人類がレグル族と出会い、覇権をかけた戦争が勃発した。人類が直接戦うのはムリ族である。
惑星ケスリス。レグル族と人類の停戦によってレグル族から人類に明け渡されることになった荒涼とした惑星。レグル族とともに、少数のムリ族がこの惑星に城塞を持ち、暮らしていた。ニウンはムリ族の戦士であり、人類との戦いへの出陣を待つ最後の若者である。
滅びの予感を秘めながらも、同時に若者としての未来を夢見ていた。
しかし、その夢は潰える。
戦争は終わり、レグル族はムリ族を裏切ったのだ。
人類とレグル族とムリ族。それぞれの思い、思考、行動の違い。同じ種属の中での思い、思考、行動の違い。そして共通性。
人類とムリ族が惑星ケスリスで出会ったとき、はじめて戦いと死以外の行動が生まれる。
それは何を生むのか…。
この小説になにか教訓を求めたりはしない。
ただただ、ムリ族という種属を生み出したチェリイの力業に恐れ入るばかり。
おもしろい。
(2012.5)
TEXT:丸目はる
monita@inawara.com
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