はるの魂 丸目はるのSF論評


戦いの虚空ー老人と宇宙5
THE HUMAN DIVISION

ジョン・スコルジー
2013


(TW)
 短編連作形式の長編っていう、テレビシリーズ方式。「その後」を描いた作品。特に感想はないが、外交は戦争を防ぐための最大の手段であるよなあ、という作品ということにしておこう。

 小説の仕立てとしては、13のエピソードにわけ、1エピソードと13エピソードは「拡大版」で前後編という、今の日本でもおなじみの連続ドラマ形式1クールとなっている。
 日本では、長編大作が売れなくなってきているようだし、そもそも小説が売れていない。一方、アメリカではどうなのだろう、たいていの作品が分厚い長編化しているようである。そういうマーケットが確立しているということなのだろうか。それはそれで作者は大変だろうと思う。そういう背景もあって、テレビドラマ形式が現代的様式美として成立するのだろう。これまでにも、たとえば、レイ・ブラッドベリの名作「火星年代記」のような短編連作はあったし、それぞれの短編をつなぐと長編になるというスタイルもあったのだが、明確に最初から「シーズン」「エピソード」と称して、テレビドラマ方式をとるというのはどのくらいあったのだろうか?
 さて、「老人と宇宙」の舞台は3冊のベースシリーズと1冊の外伝で十分なので、本作では、丁寧にその背景を描いたりはしない。本シリーズの後、地球とコロニー連合(以上人類)、コンクラーベ、非加盟エイリアン種属(以上、異星種族)が、それぞれの思惑でどのように動きだしたのか、主に「外交的手段」について語られるのが本作である。とはいえ、スコルジーなので、ミリタリー要素や、謎解き要素も満載。前シリーズを楽しめた人は楽しめること請け合い。
 個人的には、「付録」されている2作品のうち、「ハフト・ソルヴォーラがチュロスを食べて現代の若者と話をする」が好きだ。この短編を楽しむためには、全エピソードを読んで、異星種族のソルヴォーラについて知っている方がいいので、この「付録」だけを独立作品として読むと感想は変わってくるのだろうけれど、「戦争と外交」について、人間の子どもに向かって丁寧にかつ真摯に話をするくだりは、ちょっと嬉しくなる。
 ところで、あなたはチュロスが好きですか?



(2013.11.10)




TEXT:丸目はる
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