日記の表紙に戻る


1998年9月1週

ナスのぬか漬け。みょうばんを使わず、瞬間の紫を楽しむ

1998年9月1日(火) 曇り
 明け方がひんやりしている。昨夜は、本を読んでいて眠りについたのがふたりとも午前4時過ぎ。それでいて、9時には目を覚まし、ゴミを捨てる都会の生活。朝ご飯は、眠い目をこすりながら水底が用意してくれた。味噌汁には、私の田舎の呉汁の素が入っていて甘く、こってりとおいしい。呉汁の素とは、基本的に大豆を砕いたものなので、ナッツのような香りと歯触りが嬉しい。食前にスイカを食べたのだが、今年のスイカは日照不足で糖度がのっていないため、朝の水分補給にちょうどよい。
 午後から会議のために六本木に出る。六本木は、非日常的な格好をしている男女、とりわけ若い女性が多い。また、非日常的な格好の白人も多い。不思議な町である。
 会議では、福島の梨がふるまわれる。私は今年はじめての梨である。水底は、8月末に実家で食べている。これで追いついたわけだ。
 会議が終わり、いつものように近くの居酒屋で飲み会となる。ビールに、お通しのワカメの酢の物、それに、キンピラ、ジャガイモの煮っ転がし、コンニャクと砂ギモの煮物、チゲうどん、おにぎり、タコの天ぷらなどをいただく。この店は、魚ものが多く、野菜のおかずが揃っているのだが、しょっぱいのと、化学調味料の味がきついのは難点。しかし、六本木の手頃な飲み屋で、化学調味料の味を感じない店がどれだけあるのだろうか。六本木に限ったことではないが。
 ところで、酔談として弔辞が話題になった。人が死んだとき、葬式などで弔辞を読まれることがある。死んだ本人には、選択の自由があまりないのだが、この人には死んでも弔辞を読んで欲しくないと思う人の心当たりがひとりやふたりあるのではなかろうか。この人に、いかにも友人顔で弔辞を読まれては、おちおち死んでもいられない、そんな人より先に死ぬわけにはいかない、という話である。確かに、それを考えると、うかうかと死んでもいられないようだ。人間社会は難しい。
 さて、北朝鮮が弾道ミサイル実験をしたことで、「危機管理」のない日本が騒がれ、国防軍備論が台頭している。某ニュース番組で、軍事評論家が、キャスターを諭しながら、「日本の非核主義に即した独自の論理とそれに伴う防衛があるはずで、安易な軍備増強やアメリカへの依存強化を唱えるのは不必要」と論じているのが印象的。それほどに、行き当たりばったり。
 線路沿いで、白粉花が満開になり、甘い香りが夜闇を彩る。
 帰ると、冷蔵庫にホットケーキが。水底が数日前からホットケーキを食べたがっていた。たまにはこういうのもよい。あくまでたまにだが。

食(水):10時、ご飯、キャベツと豆モヤシの呉汁の素入り味噌汁、納豆、ワカメ炒め、餃子の具炒めの残り。スイカ。
食:19時、ビール、ワカメの酢の物、それに、キンピラ、ジャガイモの煮っ転がし、コンニャクと砂ギモの煮物、チゲうどん、おにぎり、タコの天ぷら(私)
食(水):20時、ホットケーキメープルシロップ添え(水底)
食:22時、同上(私)


9月2日(水) 曇り
 朝ご飯を食べて、午後からは昨日と別の会合に飯田橋へ行く。市民運動の会合なので、まずは、駅の近くにあるコーヒーショップでアイスコーヒーを仕入れる。私は、どうもどんな会合でも眠くなるたちなので予防手段が必要なのだ。
 会合が終わったあと、飯田橋近辺の友人たち3人を呼び出して、コーヒーを飲みながら1時間ほど喋る。話題は、国産有機栽培の立ち食いそば屋を成立させるにはどうすればいいかというもの。別に、そのようなことを計画している訳ではない。しかし、ついつい真面目に店舗規模やレイアウト、栽培や味、メニュー構成などについて考えてしまう。その後、本屋、スーパーにより帰宅。
 夕食は、水底が、アラブ炊き込みご飯「マクルーバ」と、韓国ワカメスープを用意していたので、早速それを食べる。マクルーバは、炊きあがるとお釜ごと皿にひっくり返して中身を取り出す。すると、肉やナス、トマト、タマネギ、ピーマンなどがきれいにご飯の表面をおおって出てくる。実に美しい飾り付けになる。比重などを計算して炊き込むのだ。スペインのパエリアを深い鍋やお釜でやったようなものを想像されると大体間違いない。ただ、パエリアと違って天地が逆にできあがり、最後にひっくり返すのである。マクルーバとは、「ひっくり返す」とか「びっくりする」という意味らしい。なるほど、出てきたときにはびっくりした。食べてもびっくり。クミンなどが香ばしくて実にうまい。がつがつと食べる。

食(私):12時、ご飯、モヤシとネギの味噌汁、キャベツと豚肉の炒めもの、ナスのぬか漬け。
食(水):20時、マクルーバ、ワカメとゴマと鶏の韓国風スープ。
食:深夜、シュークリーム。


9月3日(木) 曇り
 起きてから、一仕事。朝ご飯を食べていると水底が起き出して、引き続きご飯を食べる。午後仕事を済ませ、カレーの仕込みをしてから渋谷へ。インド(タミル語)映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』を見た。歌あり、踊りあり、アクションあり、馬チェイスあり、笑いあり、涙ありのインド大ヒット映画である。とてもおもしろい。日本でも昔はこんなに元気な映画があったような気がする。南インドでも米をむしゃむしゃと食べる。バナナも食べる。米はたくさんとれるようで、脱穀、モミすりの光景が効果的な演出として使われていた。と、ここでは食のことを書いているけれど、とにかく頭を空っぽにして楽しめる映画である。
 映画の後、家に帰っていかにも日本的な挽肉カレーを食べる。鶏と黒豚の挽肉、人参、セロリ、タマネギ、ニンニク、生姜、トウモロコシ、枝豆がベース。さらに、炒めたナスとピーマンを乗せたものである。

食:11時、ご飯、マクルーバの残り、ワカメスープの残り、レタスハム炒め。
食(私):20時、カレーライス、ワカメとレタスとタマネギの酢の物、マッシュポテト、ナスのぬか漬け、水底のみ生卵。


9月4日(金) 曇り時々晴
 明け方冷え込む。20度台前半である。しかし、眠るのが遅くなり、当然目覚めも遅く、起きたら昼前になっていた。そして、冷蔵庫に入れるのを億劫がったカレーは、ああ無情。
 夏場は気を付けていたのだが、秋口はついやってしまうことがある。誠に遺憾である。
 途方にくれ、簡単な朝食にする。ちゃんと涼しい朝に起きればよいのだ。
 一仕事を済ませてから散歩がてら買い物に。明日は人の家でもちよりパーティなので、水底の仕込みも兼ねている。道々、根菜の豚汁でも作ろうかと相談していたが、パーティ用に鶏肉と牛肉を求めたところで、気分が変わり、魚売場へ。このスーパーは、周辺の高額所得家庭を相手にしていることと、販売責任者が直接仕入れをするために、魅力のある商品が多く、坪売り上げの高さで業界に名が高い。魚売場も充実しており、今日は特に市場が充実していたようで、安く、いいものが多かった。なかでも、マグロのカマががつんと売られており、価格も非常に安かったのでついふらふらと手を伸ばしてしまう。我が家はガスオーブンがあるので、大きなマグロのカマであっても焼けるのだ。
 夕食は、水底が明日の準備と平行して用意してくれた。
 もちろん、メインはマグロのカマである。ホホ肉の繊維質でしっかりした歯ごたえ、骨側の大トロ部分の口の中で溶けるような白い身、そして、部分部分で微妙に異なる食感。大きなマグロのカマだけに、半身分でも3〜4人前と言ってもよい。それを二人で食べるのだから、まるでコースを一皿で食べているようであり、ご飯がすすみ過ぎてしまう。満足。

食(私):12時、ご飯、ワカメとネギと豆腐の味噌汁、納豆、キャベツとハムの炒め物、ナスのぬか漬け。
食(水):20時、ご飯、ネギと豆腐の味噌汁、ワカメ炒め、ワカメのゴマ酢サラダ、マグロのカマ焼き。


9月5日(土) 曇り時々晴
 今日は、食と微生物関係の人々の集まりである。水底が、インドネシアの牛肉カレー佃煮「ルンダン」と、ココナッツミルクたっぷりの鶏カレー「サンベランアヤム」、インゲンのココナッツフレーク和え、タフゴレン、テンペゴレン、ナスの煮浸しインドネシア風、蝶の型押しクッキーを作った。私は、台所を借りて、インドネシア風焼きそばのミーゴレン、ホストは、東南アジア風焼き鳥のサテ、キュウリと人参の簡単ピクルス「アチャール」、その他、クスクス、南西アジア風ココナッツサラダなどが登場し、日本ではない香りがただよった。
 ちなみに、鶏カレーは、タイのトムヤムに鶏とエビ味噌(トラシ)の風味が効いて、ココナッツミルクが全体をまとめた味とでも言いましょうか。甘さと酸味と辛さと旨みの饗宴です。これをご飯にかけ、ぐちゃぐちゃに混ぜていただくのが美味。
 食事をしながら、食べ物、キノコ、虫、写真、絵などの話で盛り上がる。
 夜、お腹がすいたのでご飯を食べる。梅干しとご飯の組み合わせがあまりにおいしいので、感動する。

食:13時、ご飯、サンベランアヤム、ルンダン、サテ、ミーゴレン、タフゴレン、テンペゴレン、アチャール、ココナッツサラダ、ナスの煮浸しクスクス、お茶、バーボン、クッキー、ビスケット、など。
食:23時半、ご飯、昨日の味噌汁、梅干し、ハム。


9月6日(日) 曇り時々晴、一時雨
 今日は、農と食の環境フォーラムとしてのミーティング。男性2名と水底、私で午後3時間ほどまじめに楽しくうち合わせ。昨夜漬けたキュウリとナスのぬか漬けや、名古屋名物のゆかり(エビの焼きせんべい)を食べつつ、途中には、ニョクマム、ナンプラー、ショッツル、パティス(フィリピンの魚醤)の味くらべや、トラシ(インドネシアのエビ味噌)とカピ(タイのエビ味噌)の味くらべ、モルジブフィッシュと鰹節の比較、味噌、テンメンジャン、豆板醤、ドウチ、コチュジャンの比較などをしつつ、食や農業について語り合う。
 その後、近所のドイツパブでビールを飲みつつ、ザワークラウトやソーセージ、ドライカレー、パンや揚げ物などを食べる。コーヒーを飲んで帰るが、話が食べもののことばかりだったのと、ドイツパブでドライカレーがパンとレタスのつまみ物だったため、ごはん欲が癒えず、家に着くなり飯を炊く。
 ご飯を食べるためのおかずのみ用意し、ご飯に夢中になる。名古屋の知人にいただいた白梅漬けは、梅を梅干しの要領で低塩に仕込み、干さないもの、香りが新鮮だ。梅ジャムのようにペクチンが出ていて、酸味があり、味は梅干し。不思議である。

食:12時、冷やし中華インスタント物に、ワカメ、キュウリ、海苔を乗せる。
食:17時、ドイツパブで、ビール、ソーセージ盛り合わせ、ザワークラウト、ピクルス、カマンベールトースト、ドライカレー、ジャーマンポテト、オニオンフライポテト、チーズフライ、水底はミルクティーとウーロン茶。
食:23時、ご飯、白梅漬け、海苔、おかか、シーチキンマヨネーズ。水底は最後にお茶漬け。


9月7日(月) 雨
 今日は午後から打ち合わせのため外出。打ち合わせが多くなるのは月初だからか。合成洗剤と石けんについての話し合いである。我が家では、髪の毛をを洗うのも固形石けん、歯を磨くのは石けんはみがき、その他、洗濯も食器洗いも基本的に石けんで済ませている。今使っている物は、バリに行ったとき買ってきた天然香料入りのヤシ油石けんである。泡立ちが優しくてよい。水底も私も天然パーマであり、さらに水底は髪を長くのばしているので、洗うのも大変そうであるが、石けんでわしわしと洗っている。それでいいのだそうだ。日本の無添加石けんよりも使い心地がよいのはなぜだろう。
 さて、起きてから、インスタントの名古屋煮込みうどんをつくり、ご飯を食べる。夜は、打ち合わせから帰ると水底が、人参と干し椎茸の炊き込みご飯と、味噌汁、それに、だだ茶豆、トウモロコシ、サツマイモ、カボチャをそれぞれ茹でたり、ふかしたものが用意されていた。ご飯をわしわしと食べる。サツマイモ、トウモロコシには手をつけなかった。その後、水底は、パン生地を発酵させ、イモ入りロールパンを焼く。大量に焼き上がる。明日はパンの日になりそうである。
 だだ茶豆は、山形の特産で枝豆の一種であるが、実が太くて甘いのが特徴である。名前の由来も諸説あるようだが、「だだ」が父親を意味することから「おやじ(が好きな)茶豆」であるという説が有望である。このだだ茶豆は、同じ種を別な土地に植えても味がまったく違うようになるらしい。群馬の農家が、種を播いてみたが、味が乗らなかったという。土地と気候が生む味なのだろうか。豆類は、空気中の窒素を取り込む菌と仲が良くて根に菌根を作ることでも知られている。土だけでなく、土地の菌も味に関わるような気がしてならない。

食:12時、味噌煮込みうどんインスタントに干しワカメ、キクラゲ、タマネギ、卵を入れる。ご飯。
食(水):20時、人参炊き込みご飯、ワカメとオカヒジキの味噌汁、ふかしカボチャ、だだ茶豆、油揚げを焼いたもの。


2日、マクルーバ マクルーバの全景。この皿は直径26センチほど
3日、カレー カレーのあと乗せ具
4日のマグロかま むむ、全長35戦地以上あるな。
7日の人参炊き込み。人参は実は多い。 だだ茶豆

copyright marume haru 1998-2002