北海道新規就農者の農楽だより
夏だって保存食づくり

藤田京子

 気づけばもう8月。今年の作付シーズンも半分を過ぎた。草取りに追われる中、果菜類の収穫が始まり、息を付く間もなく作業に追われる日が続く。そんな中でもなんとか時間をさいてがんばってしまうのが保存食づくりだ。
 長い冬にそなえた秋の保存食作りについては前に書いたので、今回は春〜夏の保存食づくりについて。

 春先、一番につくる保存食は、ニラの醤油漬け。越冬した株からニラがぐんぐん伸びてくると、刈り取って細かく刻み、保存びんに入れて醤油を注ぐだけ。簡単なものだが、あたたかいご飯にのせて食べると食がすすむ。残った醤油は炒め物などの料理に使えば、ニラの風味がきいたおいしいおかずができる。同じような醤油漬け保存をするのが、ギョウジャニンニクだ。家のそばの沢に自生しているものを酢味噌あえなどで楽しんだ後、醤油漬けにしておけば、おいしいご飯の友になる。

 5月のはじめには、たまねぎの植えつけが終わると、残ったたまねぎの苗をひたすら刻む。小分けにして冷凍しておけば、薬味や、料理の彩りを良くしたい時にさっと散らしたりと、結構活躍してくれる。保存食と言うほどのものでもないけれど、あれば便利なものだ。

 6月に入ると果菜類がたくさん食べられるようになる。鈴なりになったきゅうりを見ると、ピクルスを作らなくっちゃと気をせかされる。本州から届いたたまねぎを使って、雨降りの日にせっせとこしらえる。今年はズッキーニもピクルスにしてみた。どんなお味になっているのか楽しみだ。

 トマトソースは、私にとって保存食のなかでも一番たくさん作っておきたい一品だ。好物のパスタにたっぷりと使うと、実においしいスパゲティができる。他にも、野菜や鶏肉を煮るのに使ったり大活躍。ただ、作るのにちょっと手間がかかってしまうのが難点。忙しくて手が回らない時には、トマトをフリーザーバックに冷凍しておいて、時間に余裕のできる冬に作ることもある。脱気しておけば常温でも長く持つことも有り難い。

 ちょっと変わった保存食はメロンの漬け物。メロンと言っても、あの甘〜いメロンを漬けるのではない。メロンの栽培過程では「摘果」といって、ついた実をあまり大きくならないうちに落とす作業がある。富良野はメロンの産地で、時期になると摘果メロンは「漬物用メロン」として店頭に並ぶほど。我が家ではご近所にわけていただいた摘果メロンをだし醤油に漬けて食べた。ぱりぱりと歯ごたえがあっておいしい。

 そしてまだ自分では作ったことがないけれど、いずれぜひ挑戦してみたいのが、山菜・野草の保存食だ。うど、ふきは塩漬けにできる。冬にときどきいただくことがあり、有り難く料理している。雪解け時にたくさん顔を出すふきのとうも保存食になる。もう一つ、いただきもので楽しみにしているのが、よもぎを使った草餅。これは保存食の範疇には入らないかもしれないけれど、毎年ご近所から頂戴しておいしくおいしく食す。植え付けに忙しい5月によもぎを摘んで草餅を作るなんて、近所の農家のご婦人はエライ!とただ頭の下がる思いだ。

 ところで、忙しい思いをして、なぜこうまで保存食づくりに精を出すのか。それはやはり、「なるべく自分の家で穫れたものを食べたいから」だと思う。冬にトマトやとうもろこしを買って食べようとは思わないけれど、保存しておいたトマトソースや茹でてばらして冷凍しておいたとうもろこしならOK。色彩に乏しい冬の食卓を彩る貴重な一品となる。ささやかながら、気持ちを豊かにしてくれるのが自家製の食材を使った保存食なのだ。

今年もまた、我が家のトマトでトマトソースをたくさん作ろう。

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