ポルノ映画と品種の名前

潮田 和也

 いきなりだが、ポルノ映画は、お客さんが入るかどうかは、すべて題名で決まってしまったので、もっとも優秀なスタッフが題名を決めていた、と話に聞いたことがある。
 ちなみに、僕は学生時代、プロレス同好会にいたのだが、アルバイトでポルノ映画への出演を依頼された。それは、当時有名な「桃の木舞」という女優が主演で、その恋人の男がプロレスラーを目指しているという設定の筋書きで(筋という筋は無いに等しい)、僕はその友人で、一緒にプロレスラーを目指す男の役であった。ちなみに、残念ながらカラミシーンはなかった。
 その映画の題名が、台本では「闘魂伝説」だったのに、公開時には、「桃の木舞のセックスドリーム」に変わっていたのは、ズッこけた。やはり題名がすべて、と判断したのだろう。
 アダルトビデオを借りる場合も(僕は借りません!)、ビデオ屋では、うしろめたくぱっと手にとる必要から、内容をよく吟味して借りる場合は少ないと想像できる。ということはやはり題名が勝負なのだろう。
 スポーツ新聞も同様のようで、例えば「阪神優勝」とかいう題につられて新聞を買うと、折った裏側に「か?!」などと書いてあったりする。
 食べ物も、けっこう「おバカ」な商品名が多い。食べ物も、ピンク映画も、スポーツ新聞も、お客さんは大まじめな人は少ないので、おバカ名称でいい、と思われているんだろう。
 確かに、学校用品とか、研究用品とか、まじめな商品で、あまりそういった名前はない。例えば実験用シャーレで、「シャーレにならん!」などという商品名はないはずだ。
 農業関係も、実はけっこうおバカだったり、安易だったり、ステレオタイプだったり、と、変な名前が許される世界のようである。農家もなめられたものである。特に、種の名前は、笑っちゃうものが多い。

 以下、種苗会社のカタログから拾ってみた。

ブロッコリー…「グリーンパラソル」「グリーンハット」「緑麗」「緑帝」など、緑ならいいんかい!という感じだが、「ハイツ」(住宅地の高台?)「エンデバー」(努力?)「スティックセニョール」(……)とわけのわからないものもある。

カリフラワー…「スノーキング」「スノーニューダイヤ」(洗剤かい!)「ホワイトマウンテン」「はくらく」などと白を強調したいようだが、「ブライダル」はどうなんだろう。

はくさい…日本名が多いのが特徴で、「春笑」「豊風」「雪風」などと、さわやかでおめでたい感じを出したいようだが、「良庵」「空海」はなんだかわからん。

小松菜…ほとんどが日本語名。「楽天」など。しかし「よかった菜」はどうだろう。

ほうれん草…なぜか「オーライ」「メガトン」「エスパー」「エイトマン」「マッスル」「ソロモン」「シャイアン」など、力強い名前が多いのはナゾだったが、ひょっとして、ポパイの影響なのか???

ネギ…「夏場所」「冬場所」もちろん夏ネギと冬ネギだ。安易だ。

レタス…「バークレー」「シスコ」など、欧米の地名が多いのが特徴である。ただし「バラード」はかなりわけがわからない。

大根…ドラマでおしんが大根を寒い中洗っていたシーンがあった気がするが、そのもの、「おしん」というのがある。しかし「おせん」って誰?白いのは美人を連想させるのか、「春美人」「初夏美人」など、美人系の名前があるが、中には「夏おとこ総太り」と、ちょっと趣味が違う人用ではないか、と思うものもある。

かぶ…「梅小町」「京小町」など、これも白→美人 という、安易な連想だ。

玉ねぎ…なぜか、「アタック」「パワー」「ウルフ」「ひぐま」など、力強いものが多い。そして、もっとナゾは、「ターボ」「ソニック」「ジェットボール」など、スピード系も多い。そんなに早く作りたいのか!

トマト…大ヒット「桃太郎」に対抗してがんばって「招福」「招福パワー」「至福」など、幸せ系で攻めているようだが、苦労しているようだ。

ミニトマト…「ココ」「ペペ」「ピコ」「プチ」かわいい系でがんばっている。「ミニッ娘」は安易すぎないか?

キュウリ…夏のさわやかイメージ。「夏すずみ」「夏ばやし」「湧泉」。しかし、「さつきみどり」は…バカにしとんのか!

ピーマン…「黄ぶり」「赤ぶり」まではいいが、「オレぶり」は、もうヤケになったようだ。

かぼちゃ…栗かぼちゃ「九重栗」はここまで言うとご立派。

いんげん…なぜかこれも地名攻め。「ケンタッキー」「オレゴン」「モロッコ」

とうもろこし…アメリカのイメージ「ララミー」など。ヤケになったところで「カキクケコーン」というのもある。

 というわけで、今回の種苗の名前大賞は、きゅうりの「さつきみどり」にしたいと思います。ってこんな意図だったっけ?

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