倉渕村就農スケッチ・「冬の過ごし方」

和田 裕之、岡 佳子


 今年の冬は積雪が早く畑が雪で覆われたまま年を越してしまった。例年なら作年内に畑の片付けを終わらせ、1月には堆肥撒き、堆肥作り、落ち葉集めなどの仕事を着々と進めているところだが、雪が解けるまではお手上げだ。

 畑に入れない間は、山羊の小屋やヒヨコ用の鶏小屋作り。今年は6年ぶりに犬の小屋も新築した。石窯を作ったり補修したり、屋根をかけたり、薪置き場を作ったり、遠くない将来には炭窯も作りたいなどと毎年冬になると大工の真似事が裕之の主な仕事になる。

 佳子は石窯でパンを焼く。天然の酵母を集め育て、自家製の小麦粉を使った田舎風のパンを焼く。夏に収穫してトマトソースにしておいたものでピザを、カボチャをペーストにしてカボチャパンを、バジルペーストを練りこんだ直火焼きのフーガスもなかなかおいしい。今年は麦の収穫量が多かったため100%自給パンも可能となった。石窯焼きパンではエネルギーも自給できるところがミソなのだ。

 パン焼き以外にも農産加工をいろいろと出来るこの時期。切干大根や干しいも、たくわんを作り、野沢菜を漬ける。3年もので大きくなったこんにゃく芋で作るこんにゃくはことのほかおいしい。大豆や花豆、あずきを殻からはずしゴミをきれいに取り除く。この作業が意外に時間がかかり面倒な仕事。でもそれをこなしたあと、楽しみな豆腐作りに味噌作り。味噌用の麹もわが家の米で仕込む。今年初めて挑戦するのが番茶。番茶には新茶の時期の柔らかい葉よりも、冬の固くなった葉と茎が使えるのだ。これをザクザク刻み、パンを焼き終わったあとの石窯で焙煎する。1年ねかせて来年もう一度焙煎してから本格的に飲む予定。焙煎したてを少し飲んでみたがとてもおいしかった。来年が楽しみだ。

 冬は農繁期の夏と違って、部落も百姓仲間もわが家ものんびりとしている。朝はゆっくり起きだして夜は少し夜更かしをしたりする。気持ちのゆったりとしたこの時期に仲間と語り合ったり太極拳を一緒に練習するのがことのほか楽しい。本を読んだり、友人と情報交換したり、他の産地へ視察研修に行ったりするのもこの時期。

 今春の野菜作りのことを考え、あれもしたいこれもしたいと毎年胸の中はいっぱいになる。今年の課題の一つは種選び。自家採種できる在来種・固定種を優先、種子消毒のないものを意識的に選びたい。栽培する野菜の種も出来るだけ自給できたらいいと思う。もう一つの楽しみは、きび、あわ、ひえなどの雑穀を上手く育てて食べるということ。米麦野菜卵の自給が大分出来てきたので次は自分の雑穀を食べるのが目標だ。さらにもう一つ。ポリマルチなどの石油製品やトラクターや管理機などの機械の使用を少しでも減らしたい。手仕事を増やせば増やすほど生産量は減ることになるが、石油燃料など有限な資源の使用を控えることはいろんな意味で地球環境にいいはず。より気持ちよく生きたいということ。

 冬場にわが家に来れば、焼きたてのピザや石窯焼きのパンを食べてもらえるのだが、山道が凍っているために辿り着ける人は少ない。でもぜひ冬の倉渕の風景を見に来てください。


copyright 1998-2003 nemohamo