品種雑感


成田 国寛





 種苗法にもとづく品種登録が年間で1000件を越えるようになった。
 花卉の登録も多いのですべてが食用作物ではないものの、10年前が400件前後だったことを思えば大幅な増加だ。
 このところ品種登録が増えている背景は何だろう?
 一つには種苗法の改正により育成者の権利が大きくなったことに関係がある。今年の改正では、育成者の権利が収穫物にまで及ぶことになり、違反した場合の罰金も大幅(最大1億円)に引き上げられた。今回の改正は違法に海外に持ち出された種苗を用いて生産された収穫物が日本に逆輸入されていることへの対処であるが、結果として品種登録をすることで種苗から収穫物まで管理することができるようになったのである。収穫物の外観で判断できない場合には遺伝子の調査も検討されていると聞く。機器分析で簡単に検査できることは良いことのように思えるが、遺伝子組み換え菜種の花粉が自家採種の菜種に受粉してしまったことが大きな問題となったカナダの事例のようなことが国内でおきないとも限らない。資本と技術を有するものにとっても誠にありがたい法律である。
 いずれにしても育成者にとって有利な点が多いので、奨励品種をつくっている都道府県でも育種した品種の登録を積極的にすすめている。(なお生産者による自家採種は花卉などを除き認められている。また一般に在来種と呼ばれている品種は種苗法が制定される以前から存在しているので品種登録できない。法的な制約が少ない在来種は、今後より貴重な存在となってくる)
また、加工用途向けの需要ものびているため、加工適性のある改良品種も増加しているし、生産現場からの要望も重要だ。以前のように耐病性や外見が良いのはあたりまえで、野菜でも美味しさが求められるようになってきている。さらに高齢化により省力化や重量野菜の機械化対応など収穫しやすい品種も必要とされている。
 品種がこれほど増えているということは、世代交代のサイクルが早くなっているか、少量多品目生産が増えているかであるが、おそらく前者が主であろう。
 コンビニ商品のように1000生まれても1年後には両手で数えるぐらいしか残らないような熾烈さはないにしても、コンビニ品種と言われないようにしてほしいものである。
 ところで知らないうちにセブンイレブンやローソンなどの商品アイテムの多くがPB(プライベートブランド)商品で占められていることに気づかれただろうか?
NB(ナショナルブランド)だけでは価格の安い量販店に太刀打ちできないため、魅力ある独自商品による利益率の向上を目指した結果である。大手メーカーもコンビニの販売力を無視することができず、積極的にタイアップしてコンビニオリジナルの製品開発を行うに至っている。
 このようにスーパーやコンビニのPB化の動きを見ていると、「○○オリジナルの××野菜」のように生鮮農産物もPBになる日がくるのではないかと思えてしまう。
 もちろん流通側では種苗開発のノウハウもなく栽培指導もできないのですぐにそうなるとは思わないが、種苗メーカーなどとタイアップして機能性なり食味なりをひっさげて差別化してくるのではと予想している。
一方、生産側でもブランド化に余念がない。品種登録ができない品種についても商標登録で囲い込みを進め、市場価値を高めて有利販売に結びつけようとする動きが活発化している。

 知的財産立国に向けて国も動き始めていると聞いてはいるが、どこもかしこも囲い込みを始めると後に何が残るのかとふと考えてしまう今日この頃である。




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