戸沢村角川だより3
角川の夏の風物詩、子どもの川入り


出川真也




 昨年と違って、今年は例年にない暑い夏となりました。角川の夏と言えば、昔から川での水遊び(地元では「川入り」と呼んでいます)と魚捕り(「ざっこすめ」)です。夏休みに入ると毎日楽しそうな歓声が川から聞こえてきます。

豊かな川環境と「川入り」「ざっこすめ」
 角川地区は角川を本流にして沢内川、三ッ沢、鹿の沢、鹿入沢、長倉川などいくつもの支流が切れ込んでいます。このような多様な川の環境のため、様々な魚が棲息しています。
 子ども達は、暑い日は川に出かけて、カジカ、イワナ、ヤマメ、ハヤなどを捕まえる「ざっこすめ」を楽しみます。「すめた」(捕まえた)魚は夜、バーベキューの材料となります。私もごちそうになりました。やっぱり天然物はおいしい! 私も、地元の子ども達やおじさん方から川釣りを教えてもらって31センチのヤマメを釣り上げることが出来ました。このような豊かな川環境での川入りの伝統は昔から角川地区にはあったようで、川に入って遊ぶことを地域住民も理解し、奨励しています。
 川に親しみ、そこで原体験を積む角川の子ども達。流れのある川で遊ぶのは、本当に体力が必要で、子ども達も生傷が絶えないのですが、彼らは全然気にしていないようです。そして、川入りは男の子だけではなく、女の子も(むしろ女の子の方が多かったりします)やります。住民で運営している角川里の自然環境学校でも川の学校の先生が川釣り大会、いかだ塾など、大人も楽しめるような取り組みをしています。川の学校の先生達は川では特に「感動体験」が重要と言います。その通りかもしれません。海での体験とは違ったドキドキ感が渓流には確かに存在しているようです。

災害とダムの建設、環境の変化
 しかし、このような角川も昔に比べるとかなり変化しているようです。特に川が好きな川の学校の先生達は今の角川の汚れについて心配しています。今、角川は鮎が育たないと言います。それは、砂防ダムが上流部にいくつも(一つの支流に4つも5つもあったりします)できたため、水質が悪化したからだと考えられています。いまだに工事が進められているところが何カ所かあり、工事のために発生する濁りも魚にとって悪いようです。また、ダムのために魚が遡上できず、イワナ、ヤマメも減ってきました。一方で川の歴史に詳しい土地の古老は、かつての角川の豊かな川環境と同時に、災害の恐ろしさをセットで語ることが多いのです、なぜなら砂防ダムによってかつてのようなひどい災害はなくなったからです。このように今、角川では災害対策と自然環境とのバランスをどのようにとっていくかが課題となっているのです。

住民自らで作る新しい角川作りを目指して
 これまで「川づくり」に関して、住民は行政に対して、いわゆる「お願い型」、うまくいかないと「批判型」に終始し、受け身的で積極的に関わることが希薄だったようです。しかし、近年、子ども達に川の文化を伝えようという取り組みの中で川の環境整備を住民自らが申請して行うなどの動きが出てきました。このような活動の中で、行政でも、住民の作業に便利なように新たに川に下りる階段をつくるなどの新たな対応を見せていたりします。
 今後、角川の川作りは、どのように住民と行政がパートナーシップを構築し展開できるかが鍵となることでしょう。川で遊ぶ子ども達の歓声を聞きながら、豊かな里の川環境を次世代につないでいくことを願ってやまないこの頃です。



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