リトル・タジャン・プロジェクト
2004年10月の訪問


鈴木敦



フィリピン リトル・タジャンプロジェクト
ゆっくりと、着実に、成果が目に見え始める


 フィリピン、ルソン島北部のリトル・タジャン地域ではじめた、農と食の環境フォーラムの農業復興、地域環境保全プロジェクトは、フィリピンのNGO・CORDEVの協力を得ながら丸4年を迎えました。現地での調査と話し合いの中ではじめた、植林のための育苗場計画は、最初うまくいっていたものの、豚に侵入されて壊滅。その後、別の場所に作り直し、今度は順調に進んでいます。マンゴーの接ぎ木の講習会を行ったり、早くも苗になった木は植林したり、あるいは、育苗場を参考にして自分の庭で育苗をはじめたりと動きが出ています。
 また、寄付金などを元手に牛を購入し、育て、子牛が生まれたら、次のメンバーに渡していくという、「牛銀行」のような牛預託プロジェクトもゆっくりですが進んでいます。
 農業分野でも、食用にもなるモス・ビーンによる畑の地力回復と被覆が思った以上にうまくいっており、今後の収量などをみながら、広げるかどうか検討します。
 ゆっくりとした小規模プロジェクトですが、少しずつ目に見える成果が出てきました。

本プロジェクトに対し、今年度、RADIXの会から助成金が出されました。

ジャックフルーツの苗とグレッグ氏。 ジミリーナの苗、わずか4カ月でこれだけ生長



リトル・タジャン活動報告

鈴木敦

●物価の高騰と経済発展
 10月5日より1週間、リトル・タジャンを再訪した。フィリピンも原油価格高騰の影響を受け物価が上昇していて、生活に大きく影響しているとのことであった。訪問者にとり、なかなかそれを実感できないが、マニラ−ソラノ間の長距離バス料金がこれまでの200ペソから266ペソに値上がりしていたことから納得できた。
 そのような中で、リトル・タジャンは4年前の最初の訪問時に比べ、道路も良くなり車やオートバイが普及し、カラバオ(水牛)カートに混じりよく目にするようになった。ただ車、トラックといっても相当な年代物で、ほとんどは登録をしていないため公道を走ることはできず、もっぱら村内の交通手段になっている。

●新育苗場とマンゴーの成長
 新育苗場は、多少雑草が目立ったが新たにジミリーナやニームが植えられ、マンゴー、ジャックフルーツ、アテス等も順調に生育していた。中でもジミリーナの生長の早さには改めて驚かされ、前回の訪問後(6月)に播種したものがすでに2mになっていた。午前中に育苗場とその周辺の雑草取りをして、午後は移植可能までに生長したジャックフルーツの苗をトニー氏の所有地である丘の斜面に植林した。グレッグ氏の計画ではこの丘にはマンゴー等も植林し、将来丘の頂上に教会を建てたいとのことであった。そして教会に来た人たちが果物を食べられるようにして、このプロジェクトの記念の場にしたいとのことであった。
 次の日、すでに移植したマンゴー、ココナッツ等の生育状況を見に数人のメンバーの圃場を訪問した。全ての苗を枯死させてしまったいる中で、エミリオ氏の圃場では10本全てが、マニエル氏の所では12本中6本のマンゴーが順調に生長していて高さがすでに2m以上になっていた。この2人が良い成績を示しているのは立地条件もさることながら、移植後の手入れも十分に行ったためであろう。両者ともこのプロジェクトの良き理解者であり、いつも積極的に活動をしていることからそのように思われた。違う場所に移植したマニエル氏のイピルイピル、ココナッツも順調に生育しているとのことであったが、ここまで藪をかき分けかなりの距離を歩いてきて、かなり疲れていたため今回は見に行くことを遠慮した。

●モスビーンは元気に繁茂
 モスビーンはちょうど開花の時期であった。見に行ったサイモン氏の圃場では3haに思った以上にモスビーンが繁茂していた。これは前回の雨期に栽培し、種子を収穫した後に残った種子が自然播種したものが今回の乾期に生長した結果とのことであった。マメ科特有の形の黄色い花が咲いており、咲き終わった所には順次小さな莢がついているのが見られた。開花時期ということもあり、根粒の発達も良く根に十分付着していた。地上部の著しい繁茂の結果、他の植物の生長が抑制されており、雑草抑制効果が期待できることが分かった。今後、このモスビーンの緑肥作物と被覆作物の特性を活かし、米とトウモロコシ栽培の中に組み入れていきたいと思う。フィリピンの低地では、稲崎栽培に緑肥としてのモンゴビーン(緑豆)栽培を組み入れた技術があり、モスビーン栽培を組み入れることはそれ程難しくないと思う。トウモロコシ栽培は年間2作であり、モスビーンを組み入れるとすると2作目の収穫時期である3〜4月から1作目の播種時期である5〜6月となる。いずれについても簡単な実験を行うことにしているが、現場の技術とするには生活や農作業等を含めた生産者の全体のスケジュールを考慮する必要があり、この点が最も難しい点と思われる。モスビーンは期待するところが大きく、今後も生産者と話し合い利用方法を考えていく予定である。

●牛もそろそろ育ってきた
 牛預託飼育プロジェクトについては、前回の訪問後新たに5頭購入し預託されたとのことであった。今回は最初に預託された牛を数頭見に行った。いずれの牛もそれぞれの場所で繋牧されており、すでに12〜14ヶ月齢になっていた。あと数ヶ月で種付け可能となり、およそ1年後には子牛が得られ、残りのメンバーに預託することができるであろう。

●誰か、一緒に訪問しませんか?
 すぐに経済に結びつかないことを継続して行うことが難しい状況にある中で、各プロジェクトとも自主的に運営されていることが確認できた。ゆっくりとした歩みではあるが、継続していくことが重要である。
 村民の意識を刺激する上でも、多くの日本人に来てほしい、というグレッグ氏からの要請があった。
 何方か訪問してみたいという方はいませんか?


育苗場。多少雑草が目立つ。 牛預託飼育プロジェクトの牛。繋牧されている。
ジャックフルーツの苗の移植。 圃場一面を覆ったモスビーン。雑草を抑制している。
モスビーンの花と幼莢。 モスビーンの根。根粒が十分に発達している。






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