戸沢村角川だより4
秋から初冬にかけての山村の暮らしぶり
ー自然と文化、人と人が紡ぎ出す里の原風景ー


出川真也




秋の山の恵み
 角川地区の里山がその恵みでにぎやかになるピークは年に2回あります。春は山菜、秋はキノコの出る頃です。今回はまずキノコに関して紹介しましょう。キノコを採るのは大変難易度の高い営みです。まず、山のどこにキノコが出てくるのかをしっかり知っていなければなりません。そしてキノコが生えている場所まで行ける体力が必要です。そして食べることができるキノコなのかどうか見分ける知識、そして採ってきた後、料理したり保存したりする知恵が必要です。
 長年角川地区で暮らしてきたおじいちゃん、おばあちゃんは当たり前のように日々の暮らしで秋の里山を活用しています。キノコの郷土料理は50種類以上あると思われます。まず、8月の暑い盛りに早速奥山にトビタケが出ます。トビタケご飯はその歯ごたえといい独特の香ばしさといい絶品の高級品です。今年は猛暑の影響で豊作だったようです。そして、9月の下旬からはスギカノカ(10月上旬まで)、ブナカノカ(10月上旬まで)、モタツ(11月上旬まで)、カラマツモタツ(11月上旬まで)、10月の中下旬からナメコ(11月中旬まで)、ムキタケ(11月半ばまで)、シメジ(11月半ばまで)とたてつづけにキノコが出てくるのです。

その他の秋の恵み
 秋の山村の恵みはキノコだけではありません。山には他にアケビが出てきますし、アケビの炒め物は私の大好物です。そしてアケビの蔓はもの作り工芸品の材料となります。川はモクズガニが登ってきます。身は海のカニよりは少ないですが、海のカニに勝るものがあります。地元のお父さん達はカニの甲羅に熱燗の日本酒を注いで飲む、というヤクザな(?)楽しみ方をしています。
 晩秋の頃になってくると「角川カブ」の漬け物が出てきます。地元では「カブ漬け」と呼んでいますが、地元のカブを酢漬けにしたものです。「角川カブ」は山間地の火山灰土特有の土壌によって栄養分を豊かに含んだ農産物のひとつで、先日もテレビの全国放送で放映され健康食として注目を集めています。
 このように地区を取り巻く自然はそこに暮らす人々の営みによって活用され、同時に維持されており、こうした集落住民の生活文化と自然が一体となって、ふるさとの原風景とも言える美しい山村の景観を形成しているのです。

年中行事から紡ぎだされる近所づきあいの風景
 年末のこの時期、集落は毎日何かかしらの行事が行われています。12月はほぼ毎日が年中行事です。
 1日一時神様、3日大師様、5日えびす様、7日お大日様、8日太平ず様、9日大黒様、12日山の神様、14日2回目の大師様、17日観音様、18日秋葉山、23日3回目の大師様、24日地蔵様、26日6夜様、27日不動様、30日正月の餅作り、31日年越しといった具合です。
 これらの行事には地域の自然とそこに根付く文化と相関関係が見て取れるでしょう。自然と生活文化とが結びついて様々な地域行事や活動が行われています。伝統的な地域行事は、年50以上は存在しており、それらがこの地区の集落住民特有の近所づきあいの風景を形成しているのです。

 このように秋から初冬にかけての山里の暮らしぶりの風景にもまた、自然と人、人と人のつきあいの原風景が垣間見られるのです。
 角川里の自然環境学校では、こうした要素も大切に来年も活動を展開していきます。来年もどうぞよろしくお願いします。よいお年を!




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