今さら聞けない勉強室 ねもはも版
テーマ:遺伝子組み換え作物の生態系汚染


牧下圭貴




■日本の港周辺に自生しはじめた
 日本は食料輸入大国です。トウモロコシ、大豆、ナタネは、食用油の原料や畜産飼料として大量に輸入されています。そして、世界で栽培されている遺伝子組み換え作物のほとんどが、この3品目です。輸入されるときは、実のままです。この3品目とも、そのまま畑にまき、土や水、気温の条件が合えば発芽します。
 アメリカなどから船で運ばれ、各地の港に水揚げされ、そこから、製油メーカーなどにトラックで運ばれていきます。水揚げのとき、積み替えのとき、輸送中に種は道ばたにこぼれ落ちていきます。そして、運のよい種は、そこで芽を出し、育ち、花を咲かせ、種をつけます。
 農水省は、茨城県の鹿島港周辺で遺伝子組み換えの除草剤ラウンドアップ耐性セイヨウナタネについて、運送中などにこぼれ落ちた種子が自生していることを2002年の調査で把握していましたが、調査を2004年まで行い、市民団体の再三の要請によって6月にようやく結果を公表しました。
 そこで、遺伝子組み換え汚染種子ネットを中心に各地の市民団体は、港や周辺の地域の調査を行いました。これまでに、茨城県鹿島港、神奈川県横浜港、愛知県名古屋港、三重県四日市港、兵庫県神戸港、福岡県博多港、静岡県清水港で除草剤ラウンドアップ耐性のセイヨウナタネが自生していることをつきとめました。清水港では、除草剤ラウンドアップ耐性大豆、害虫抵抗性トウモロコシの自生も発見しています。

■メキシコの悲劇
 トウモロコシの原産地であるメキシコ周辺にはたくさんの固有種トウモロコシがあります。一方で、メキシコはアメリカからトウモロコシを輸入しています。また、違法な作付けもあったのでしょう。メキシコでは、固有種トウモロコシから遺伝子組み換えトウモロコシの遺伝子が次々と発見され、遺伝子汚染が進んでいることを示しています。

■ラウンドアップのワナ
 除草剤ラウンドアップとラウンドアップ耐性作物は、多国籍企業のモンサント社が開発、販売しています。生産者は、同社(現地法人等)と契約して、購入します。
 さて、アメリカなどでの話ですが、例えば、ラウンドアップ耐性トウモロコシを栽培、収穫したあとに、ラウンドアップ耐性大豆を植えたとします。当然、同じ畑には、前に栽培したトウモロコシの種子がこぼれ落ち、生えてきます。雑草を枯らそうと除草剤ラウンドアップをかけても、この前作のトウモロコシは枯れません。これを枯らすためには、別の除草剤が必要ですが、そうすると大豆も枯れてしまいます。結局、大豆畑にトウモロコシがぽつりぽつりと生えていることになります。大豆の収穫後、ほかの除草剤で枯らすしかないのでしょう。でも、種は枯れずに残ります。そしてまた畑には…。

■生命特許のワナ
 遺伝子組み換え作物の組み込み遺伝子は、開発企業の特許権が認められています。この生命特許は、その遺伝子を持つ生命体にまで及びます。つまり、こぼれ落ちて自生したラウンドアップ耐性ナタネも、畑で種が落ちて育ったトウモロコシも、メキシコで汚染された固有種のトウモロコシも、開発企業が権利を主張できます。
 実際に、カナダの農家パーシー・シュマイザー氏は、自分で育種したナタネ畑に植えていないにもかかわらず、ラウンドアップ耐性ナタネが見つかったために、モンサント社から損害賠償請求を「受け」、最高裁まで争いましたが、敗訴しました。

 遺伝子組み換えナタネの自生は、同じアブラナ科の多い日本の自然への影響、自家採取農家の種子汚染の心配だけでなく、日本の自然環境が企業の生命特許の権利に犯されつつあることを意味しています。

参考資料
遺伝子組み換え汚染種子ネット
http://www007.upp.so-net.ne.jp/Seeds-Network/
「偽りの種子」ジェフリー・M・スミス著(家の光協会)
「GM汚染」天笠啓祐編著(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)




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