うまいぞ、エビイモ

成田 国寛





■好みの里芋は?
 野菜をもっと知るために「八百屋塾」という八百屋さん向けの勉強会に通っている。11月の勉強会では旬の里芋・大根・カキについて学んだが、その中に気に入った里芋があったので少し紹介したい。

 里芋の種類は大きく土垂系(関東)と石川系(関西)にわかれている。それぞれ特徴があり関東の里芋はさっぱりタイプ、西の産地は粘り気が強いしっとりタイプが多い。
 里芋は水を好む作物なので、水が豊富で夏が暑い地域が栽培に適している。ちなみに縄文時代から里芋が栽培されていたという記録もあり稲作より早く日本に渡来し、重要な食糧であったことが知られている。

 里芋の試食では土垂、蓮葉、女早生、セレベス、京芋(タケノコイモ)、エビイモなどを食べ比べた。土垂はオーソドックスな里芋の風味であるが、女早生はもっちり感が強く独特の食感がある。
 数ある里芋の中、エビイモがコクと味に深みがあり圧倒的においしかった。参加者一同の評価がもっとも高かったのもエビイモ。正直、里芋がこんなにうまいと感じたのは初めてである。

 食べた感動を忘れないうちにアパートでもエビイモ(静岡産)を調理して味を再確認してみた。まず適当に切って一度下ゆでしたものを食べる。ホクホクして栗のような風味としっかりした歯ごたえ。味付けしなくてもかなりうまい。また煮込んでも形が崩れないのも特徴だ。里芋は土臭いというイメージを打ち壊してくれた。やっぱり食べてみないとわからんということはこのことか。

 エビイモは土を選ぶため栽培できる地域が限られる。プロの八百屋さんの話では本場京都のエビイモは静岡産よりもさらにおいしいとのこと。
 高いだろうな〜と思って京都産の店頭価格を調べるとなんとキロ2000円もする。静岡産でもキロ1000円前後。なかなか手がでない。ちなみに里芋の一世帯当りの年間購入量は3.8kg前後で、年間支出金額は1,500円弱だから、エビイモの価格は…やっぱり高い(後述するが、栽培に手間がかかるので高いのも納得)。

【補足】
子芋が海老の様に曲がり表面に縞模様もあることからエビイモと呼ばれるようになった。エビイモは商品名で品種的には唐芋に属する。親芋・子芋ともに食べる。栽培中に何回も土寄せしながら土の重さで子芋を曲げて育てる。子芋をエビのように曲げるには相当な技術が必要。京野菜の一つで京都の名物料理「いもぼう」につかわれる。
【蛇足】生の味を知りたくて、少々かじったところ味もそっけもない。あのおいしさはどこにあるのか?しかし、すぐにエグ味というか、舌がピリピリし始めて相当後まで尾を引いた。下ゆでだけは必要だということを身をもって理解した。

■京都産は…希少品だった
 以前「ねもはも」に水菜は関東産が多いと書いたが、エビイモは消費量も多くないので京都産が多いのではと思いつつ調べてみたところ、これまた静岡産が圧倒的に多い。(江戸時代は大阪の富田林周辺が主産地)
 現在、エビイモ生産量の8割以上が静岡産。浜松に住んでた頃、遠州中央農協の管轄下で里芋が植えられていたのをよく見かけたが、当時それがエビイモとは気づかなかった。
 京都産は消えゆくのかと心配していたところ、タイミング良く京都府農業資源研究センターでエビイモの優良系統が選抜されつつあると耳にした。あわせて京都府全域でも生産拡大の気運が高まってきているという。これで安心して本場の「いもぼう」を食べにいけるというものだ。



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