ちれぢれ草「生活編2」 2002.4.18
池田久子

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〜〜〜〜  ちれぢれ草 〜〜〜〜 14巻  「生活編 2」 2002.4.18
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「 ちれぢれ草」は、チリ共和国に青年海外協力隊の村落開発普及員として
赴任しているわたくしが、日本から17000キロ離れた任国チリを少しでも知
っていただきたく、日々雑感を徒然なるままに綴ってお送りさせて頂きます。
ご不要の方はご遠慮なくそのまま返信してください。 送信者:池田久子
 
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チレの旅で主要な乗り物といえばやはり長距離バス。わが村サンニコラスも毎日夜中
の11時半に首都行きのバスが通っており、切符は村の店で予約して購入。祝前日は通
常の2倍ちかくまで値上がりする時もありますがだいたい3500ペソとお安い。(現在
の日本円で700円くらい、物価の価値的には1700円くらい。でも私的には3500円とい
う感覚)サンチアゴのバスターミナル、日本で言えば東京の上野駅につくのが朝6
時。となかなか便利な時間設定なのです。
このバスはリクライニングでトイレつき禁煙、禁酒と標準ですが、長距離路線によっ
ては180度リクライニングできるとか、フットレストがしっかりしていて、テレビ映
画などが見れるイヤホンつき、毛布・枕配布、朝食つきなどとまるで飛行機の中の
サービスなみに充実していたりします。通常、運転手のほかに添乗員がおり、乗車前
には大きな荷物を積み込み、荷物預かりチケットを手渡し、乗車後は切符の確認と名
前や緊急連絡先電話の確認などを行い、夜はカーテンを閉めて廻ったりとかいがいし
く働きます。降りる場所も確認ずみなので起こしてくれ、荷物を取られる心配もなく
安心して夜行バスに乗っていられるとは、いやはやチレは本当に発展した国だなーと
感心してしまいます。

さて、そのほかよく利用するのがミクロといって長距離バスよりも小さな市内を走る
バス。村から隣のチジャン市まではバスで30キロ、40分ほどと近いうえ、400ペソと
安く1時間に2、3本と出ていますが、100キロほど離れた海のほうの町からのバスが
多いので遅れることも多く、1時間くらい待ちつづけることも。チジャンからの終バ
スは8時半なので、仕事が終わってからでも買い物などの用事があれば、ちょいと
行ってしまえます。チジャン発のバスは予約して席に座ることもでき便利です。

そしてサンチアゴ市内のミクロ。片側3車線とかの太い道路をバス同士競争しながら
突っ走るキケンな乗り物です。急発進急停車あたりまえ、怪我したくなかったらつか
まっとけ!と言わんばかりの荒い運転には訳があり、バスの運転手さんは個人経営
で、バスと路線が決まっているだけで、たくさんお客をのせたほうが稼げるので少し
でも早く走り、多くの客を乗せようと競争しあっているのです。その無謀な競争のあ
げくの事故や、乗客とみせかけて乗ってきた強盗が運転手さんに重症を負わせたり、
など事件もあるようですからなるべく安全な地下鉄のほうがいいのですが地下鉄は朝
6時半から夜10時半までで、私が利用する長距離バスのターミナルへの行き来には結
局このミクロ。しかし路線番号と行き先が前のプレートに書いてあるだけで、これが
暗いとヒジョーに判別しにくい。暗い朝や夜は行き先が読めず、しょうがないので一

ずつ止めて聞いたりして。やっと見つかって大きな荷物を抱えヨロヨロと乗り込んだ
と思ったらおかまいなしに急発進、運転手に300ペソ差し出すと、彼は左手でハンド
ルを握ったまま右手で受け取りチャリンと料金箱に投げ込み10ペソのお釣りと片手で
千切った切符を黙って差し出す。信号待ちのときは500ペソの場合のオツリを手渡し
やすいように刻みを入れた木箱に10人分くらい常時セットする運転手。何気ない光景
ですがこの無駄のない素早い動きに関心。よく1000円札がジージーと戻ってきてしま
う日本の料金箱の味気ないこと!

そして私がミクロが好きな理由は、信号などで止まってくるときにいきなり乗り込ん
でくる物売り、大道芸人、おもらいさんなどを見ているのが楽しいんです。
 まず物売りの王道は100ペソのアイスキャンデー、ジュース、チョコレートやガム
など
のお菓子、変わったところでは子供の文具、本、裁縫道具、携帯ラジオなんてのも。
 次に大道芸人、これはだいだいギターの流しのお兄さん、歌う曲はビートルズ、
伝統的なチレ民謡とか流行のポップス、一度は説教もまじえた宗教っぽいのなんか
も。
3曲くらい歌ってからお金を入れてもらうコップをチャリチャリさせながらお客の間

歩きます。もらえなくてもまた降りて次のバスに乗っていきます。一度は人形劇の
二人組みも乗ってきて楽しかったのでつい100ペソ差し出してしまいました。
 あと、少しきまりが悪いのはおもらいさん。だいたい「乗客の皆さん、少しお時間
をいただきます、実は・・・」といった具合に自分の病気とか親の病気とか窮状を話
したりとか、クリアファイルにはさんだ写真などを掲げて見せながら説明し、その後
コップを携え乗客の間をまわるパターン。また写真つきのカードカレンダーのような
ものをどんどんと乗客皆に配り終えた上で、後ろから引き上げてくるときにそのカレ
ンダーを買うという形でお金を払うパターン、いらないひとは黙って返すだけ。
 首都の街中や地下鉄の出入り口などには物乞いは結構いて、その多くが障害者、
老婆、乳飲み子を抱えた女性だったりしますが、バスに乗り込んでくる「おもらいさ
ん」はもっとテキパキしているかんじです。

チジャンからサンニコラスへ帰るミクロに乗って発車まで待っている時も、物売りは
よく乗り込んできます。この売るものが面白い、お菓子類、アイスキャンデー、
ジュース、メロン10玉一袋、ドライヤー、時計、刻み野菜一袋、携帯電話カバー、
テーブルクロス、子供のおもちゃ、文具教材などなど。どうしてこんなもんを売りに
くるの?と言いたくなるほどのバリエーション。

万事きちんとして先進国然とした面とごちゃごちゃしていて予測不可能でいわゆる途
上国らしい面とが混在しているのがチレの生活です。


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