ちれぢれ草 「できごと編1」  2001.12.10
池田久子

===========================================================
〜〜〜〜  ちれぢれ草 〜〜〜〜 4巻  「できごと編1」  2001.12.10
===========================================================

「 ちれぢれ草」は、チリ共和国に青年海外協力隊の村落開発普及員として
赴任しているわたくしが、日本から17000キロ離れた任国チリを少しでも知
っていただきたく、日々雑感を徒然なるままに綴ってお送りさせて頂きます。
ご不要の方はお手数ですがご連絡ください。   送信者:池田久子
 
────────────────────────────────
「狂犬病」

チレにきて5ヶ月足らず、ついに体験してしまいました。もし狂犬病に発病し
たら確実に死にいたるという恐ろしいビデオを訓練中に見せられ、さんざん
脅されて犬には十分気をつけていたつもりでしたが、先日ついに犬に噛ま
れてしまったんです!
 わざと脅かすようなことを言いましたがご心配なく。チリでは飼い犬に
ワクチンが義務付けられていて狂犬病の発病もないそうです。
でもこれが他の途上国だったら今ごろ真っ青になっていたことでしょう。

 11月29日木曜日、他の隊員の活動視察旅行に出かけるため、朝早く家
を出て、午前中に帰国目前の栄養士の隊員の活動をみたあと、10時間か
けて職種が野菜のT隊員の任地まででかけました。夜の10時ころ彼の家
に着き、家族に自己紹介や世間話などをして、さあちょっと買い物にでも行
こうということになり、家人の案内にしたがって、裏口からでて表に向かって
歩いていたら、いきなり後ろの暗闇から飛び出した飼い犬に左のアキレス腱
の上のあたりをガブ!っとやられたのです。一瞬何が起こったか分からなかっ
たほど吼えもせずあっという間でした。あまりの痛さに足を押さえてしゃがみこ
み、足をひきずり部屋に入って明りの下で見ると、傷口は血がでて腫れあがっ
ている。急いで流水で傷を開くように洗い流し、消毒して冷やすがジンジンと
痛くてたまらない。ともかくJICA事務所の調整員に連絡をとって、今後の対応
を伺うと念のため狂犬病ワクチンを打ったほうがいいと助言され、翌日はサン
チアゴに行くことになってしまいました。

10時間かけてわざわざ犬にかまれにいったようなこの状況。本当に情けない
ったらなかったです。Tさんの活動見学、堆肥づくりの手伝い、アボガド工場
の見学などを2泊2日で予定していたのに、たった20分で犬ごときにその目的
を変更させられるとは、不可抗力だったとは言えなんと間抜けな・・・!
犬に噛まれたことよりも何も見ずに帰るほうが悔しく情けなかったのですが、
申し訳ながるTさんやそのご家族には笑顔で対応。慌てていたTさんには、私
はいたって平常心に見えたとか。その夜彼は心配でなかなか寝付けなかった
そうですが、私は熟睡。こういう場面は怪我した人間のほうがかえって落ち着
いてしまうものだということが分かりましたね。

狂犬病の予防注射は日本にいるときしましたが、噛まれたら0日、3日後、
1週間後と最低3回は打つ必要があり、噛んだ犬を10日捕獲しておくあいだ
にその犬が狂犬病の症状で死んだりしたらさらに3回うたなければならない
のですがこの場合はワクチンが効くかどうかは保証できません。チリの犬は
ほとんどが鎖に繋がれておらず、この犬は最近でも村の道で女性を噛んだ
とか、ご近所ほか2軒でもエサをもらい、計3つ名前をもっているというタフな
奴ですが、ワクチンはされており10日の観察期間も終わりました。やれやれ。

とりあえず、30日金曜1回目、2回目は日曜になるため月曜に首都の病院で
打ち、残り1本も金曜に村の診療所で無事に済ませました。
 最近ほかの先輩隊員もかまれ、そのときはお気の毒にと思いながらまさか
自分が次に噛まれるとは思ってもみませんでした。その先輩に、横一文字の
7cmくらいの噛み傷を見せたら「僕よりずっとひどい、痛そう!」と言われ、
ちょっと変な優越感。その先輩は注射後4日くらいは喉が渇いてボーっとした
とか。そんな自覚は無かったけど、どうりで金曜日は韓国焼肉とビールが
おいしかったわけです。傷は上から押さえると少し痛いものの、何も問題なく、
睡眠4時間で臨んだ土曜日の送別会の後は朝までサルサを踊りまくり、日曜は
睡眠2時間のまま女性4人で日帰り旅行に出かけ、乗馬も30分楽しみ、かつて
ないほど休日を満喫しました。このはしゃぎよう、何か注射のせいでしょうか? 

ともかく視察旅行ができなかった憂さを晴らすには十分すぎるほど楽しい休日
を過ごすことができ、村に戻ってからは下宿の家族や職場で傷跡を見せびらか
しては「痛そう!」「泣いた?」という反応を楽しみ、犬に噛まれるネタで同僚に
からかわれたりしています。ひとつ話題ができてラッキーという気分です。
(傷跡は足首に残りそうですが。)

 皆さまも放し飼いの犬にはくれぐれも気をつけてくださいませ。

copyright 1998-2001 nemohamo