ちれぢれ草「社会・文化編3」 2002.1.21
池田久子

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〜〜〜〜  ちれぢれ草 〜〜〜〜 7巻  「社会・文化編3」 2002.1.21
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「 ちれぢれ草」は、チリ共和国に青年海外協力隊の村落開発普及員として
赴任しているわたくしが、日本から17000キロ離れた任国チリを少しでも知
っていただきたく、日々雑感を徒然なるままに綴ってお送りさせて頂きます。
ご不要の方はお手数ですがご連絡ください。   送信者:池田久子
 
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気が付けば1月も3週間がたってしまいました。先週は年に2回の隊員総会
や健康診断、分科会、親睦旅行などの予定がぎっしりで1週間、首都サンチ
アゴに滞在していたのです。同期隊員同士「日本語で話せるってほんとに
いーねえー」と、喉がかれるほど毎日しゃべりました。言葉の壁のない日々
は本当に本当に居心地の良いものでした。しかし、戻ってからの昨日、今日
は簡単なスペイン語すら、パッと出てこず大変でしたけど。

 さて年末年始に日本からいただいたメールや手紙の多くに「すっかり生活
に慣れたようだ」「毎日楽しそうだ」「がんばっているね」「応援しているよ」など
の内容が多くありました。が、どうもその言葉にしっくりこないのが実情です。
生活に慣れたわけでも毎日すごく楽しいわけでも、とってもがんばっているわ
けでもないから、応援しているなどと言われると、どうも居心地が悪いのです。
うまくしゃべれなかったり、聞き取れないたびにドキドキハラハラし、落ち込ん
だりイライラしたり、悔しかったり、泣いたり、恥ずかしかったり、やる気が出ず
自己嫌悪から抜け出せない日もあります。そんな日ばかりではないですが。

 ということで今回は私のストレスについて。
チリでは生活上の問題は感じませんが、どうしても慣れないのは、外国に行
ったことのある方なら誰でも感じたことがあるであろうジロジロ見られる視線
と「チナ」「チニータ」と声をかけられることです。これは「中国人、中国人のね
えちゃん」っていうことで、こちらの人は中国も韓国も日本も区別のついてい
ない人が多いので、大体中国人と言われます。チナ、チニータ(男性の場合
はチノ、チニート)というのは日本でいえば「外人」っていうくらいの意味で、
そんなに蔑称ではないとは思いますが、言われて気持ちのいい言葉では
ありません。その言い方が問題なのです。市場や道路工事のおにいちゃん
たちが「やあ!チニータ」と声をかけたりするのは明るくて罪もなくてニコリと
笑いかける余裕もあるのですが、すれ違いざまに「チニータ」とはき捨てる
ように言われたり「ようチニータ! *○?〜×!」と分けのわからない中国
語を真似たような発音をして数人でゲラゲラ笑われたりすることもあります。
そういう時はほんとにむかーっとしますし、石でもぶっつけたくなります。
 このまえはサンチアゴの一番の繁華街で店に入って話し掛けたら露骨に
「この中国人何言ってるかわかんないわ」というようなことを売り子同士で大
きな声で言われ、その後もひどく馬鹿にした態度で、2度とここで買い物はし
てやるか!と思いました。(結局安かったから買っちゃったけど)

また、無知と誤解による質問にも辟易します。特に「虫や蛇、ネズミなどを
食べるか?」というものです。テレビで中国人が虫や蛇などを料理して食べ
る番組があったそうで、それの影響で「あなたも食べるのか」になってしまう
のです。最初のうちは笑って「食べませんよー」と言えたのですが、何度も
続くと腹が立ってきて、こっちもむきになって否定してしまうときもありました。
まだ赴任して間もないころ、家に来た牧師さんが「虫を食べるか、蛇は、ウ
サギは、ネズミは?」としつこく聞いてきたのであまりに腹が立って「食べま
せん!中国と日本は違う食文化、違う国、私たちは食べません!」と言いき
ったら、たじたじして「冗談だよ〜」と言うので「私はその冗談は嫌いです!」
と怒りました。謝った牧師さんが帰ってからも悔しくてたまらず部屋に篭って
泣いてしまいました。泣くほどのことでもないのに。

そういうことがあると、「チリ人なんて嫌いだー!」と叫びたくなります。
もちろん良いチリ人はいっぱいいるのに、腹がたっているとチリ人をひとくくり
にして嫌悪する時が、悲しいけれど実際あります。逆に日本にいる時は感じ
なかったほど、日本、日本人、日本的なものがすばらしいなあとひとくくりに
賛美することも頻繁にあります。物事にはいい面、悪い面あるのがあたりま
えなのに、余裕がないと単眼的に物を見がちになり、感情のコントロールも
下手になりますね。余裕を持って冷静な目を持ちたいものです。

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