フィリピン・リトルタジャン・プロジェクト
調査に同行して


里地ネットワーク事務局長 竹田純一



 日本中どこへ行くにも、地図を片手に、釣りをしたり、集落調査の仕事に出たりと、地図に書き込まれたさまざまな情報を活用して、ポイントや地域資源を確認しながら僕は旅を楽しんでいます。ところが先日、フィリピンの集落調査に同行したときは、自分のいる場所の標高も河川の状況も、それぞれの位置関係や距離もわからず途方にくれてしまいました。もちろん、そこで暮らす人々は、自分の経験則で暮らしているのでなんら困った様子は見られません。

「井戸を掘ってポンプアップできないかな?」 などの協議が行われると、標高差と距離、等高線の状況などがまったくわからないことに気づきます。どこのルートを通せば良いか。発電量やポンプの性能、配管の長さはどうか…。こんな話が出て、簡単な水位と集落間の距離や方向程度がわかる地図を、おこすことになりました。幸い方位計と標高計がついている時計を持参していたので、極力丹念に基点となりうる山の頂や飲料水のタンクの場所、学校の屋根等に合わせて計測してみました。

 調べてみたのは、2つの集落と1つの農場。この3つの位置関係は、どのようになっているのかです。地元の方に尋ねてみると、あの山の3倍先に次の集落はあるとか、歩くと、2時間ほどだとか、この辺で一番高いのは、EMIKO岳だというような返事が帰ってきました。また、どの井戸が良いか悪いかと聞くと、乾季に枯れないのは一つだけという返事も帰ってきました。この2の集落の飲料水は、標高の高いところにある浅井戸でした。井戸が遠い家は、雨水を溜めて煮沸して飲んでました。

 地図をつくりながら、安定的な井戸の位置、簡易な水の管理方法、樹木や作物を植えるべき位置などが、山と谷、湧き水と井戸と池の位置から、少しづつ見えてきます。この地図を元に、地元の方々が、必要な情報を書き入れ、方位や距離を細かに計り直して修正していけば、なんとか、集落の今後を話し合うための地図ができて、計画づくりの参考になるのではないかと期待しています。
竹田氏作成の地図。相対的な地形と高度差、井戸の位置と高度を記載


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