Space Cat Visits Venus
ルースブン・トッド
1955

旺文社ジュニア図書館(小学校3年、4年以上)黄色背表紙として1971年に発行されたボックスシリーズの中の1冊。中学国語教師だった父が、赤背の小学1・2年向きのボックスに続き買ってきてくれたボックスに入っていたSF作品である。
黄背のボックスにはタゴールの「カブールからきたくだもの売り」、カッシイリーの「もえる貨物列車」、トルストイの「イワンのばか」、中国童話の「みかんぢょうちん」のような世界の物語が含まれていて、なかでも「カブールからきたくだもの売り」は中東、南アジア世界へのあこがれをいだかせるものであった。
このボックスの中で唯一の「宇宙」をテーマにしていたのが、本作「宇宙ねこの金星たんけん」である。
あらすじは、
月基地唯一の猫であるフライボールは、宇宙飛行士のストーンさんのかけがえのないパートナー。
いま、月基地では金星探検に向けてのロケット製造が佳境を迎えていた。初の金星探検はどんな危険があるかわからないので、ストーンさんとフライボールだけで行くことになったのだ。金星ロケットの中は無重力。フライボールは足に磁石の靴を付けて宇宙船を自由に歩き回れる。金星に着いたら地球に近い重力で苦労するんだけど。
金星の厚いアンモニアの大気を抜けて、地上の下りると、不思議なことに酸素に満ちて呼吸可能な空間が広がっていた。そこは動くことができる植物たちの世界だった。ストーンさんとフライボールの金星での探検がはじまる!
ということで、きちんとSFしている。
この時期の子ども向けSFといえば、たいていが翻訳者による「超訳」で、独自の解釈を加えながら子ども向けに読みやすく、かつ、ページ数の制限に合わせて書かれているので、果たしてこれが原著通りの訳なのかどうか、わからない。
子供心に、月基地の低重力の環境や水耕栽培プラント、じゃがいもの水煮缶詰を開けるシェフたちという風景にはわくわくしたし、金星の不思議な植物との交歓や恐ろしい敵との戦いにもときめいたものだ。
すでに手許には残っていないが、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができたので、当時を思い出しながら楽しく読み返すことができた。うれしい。
さらに、ネット時代。ちょっと調べてみたら、著者のルースブン・トッドは50年代に、この「宇宙猫」シリーズを4冊と、その他の児童書数冊を書いているが、それ以外は作家、編集者などとして活躍した人だということも分かったし、本書の執筆時期や原題も知ることができた。
以下が、関連作品。
1952年に Space Cat(宇宙ねこ)
1957年に Space Cat Meets Mars(宇宙猫火星へ)
1958年にSpace Cat and the Kittens(宇宙猫と子猫たち)
元が児童書なので、翻訳もそう原著とずれていないだろう。翻訳は白木茂、絵は渡辺三郎。
いまでも4作品とも英語版で出版され続けているので児童SFの古典なのかもしれない。
国立国会図書館デジタルコレクション
宇宙ねこの金星たんけん
https://dl.ndl.go.jp/pid/12929785