TVアニメ「スペース☆ダンディ」

総監督 渡辺信一郎(2014)

 アニメ制作会社BONES原作・制作によるSFギャグアニメーションである。2シーズン各13話で構成されており、おおまかなストーリーもあるが、基本的には単話ごとに同じ主人公や登場人物とゲスト登場人物によって繰り広げられる漫画連載型となっている。脚本家やアニメ制作、キャラクターや背景などのゲストクリエイターも多彩だ。
 さて、SFでコメディでギャグでアニメである。様々な作品のパロディ、小ねたが満載で、70年代から00年代までの漫画、アニメ、小説、映画などの知識量や経験値があればあるほどおもしろくなる、噛めば噛むほど味のするスルメのような作品である。この分野は漫画では吾妻ひでお、とり・みきが秀逸だと思っている。いろんな過去作品を経験するうちに、数年、数十年経ってから、あ、あのシーンは、あの映画のパロディだったか、というのを気がつく知的楽しみなのだ。
 もちろん、ほとんどそういう知識がなくても単純に楽しめるのが良質なギャグ作品のいいところだ。まず、その作品の魅力に惹かれ、その上で「あれ、これってもしかしてなにか元ネタあるんだよな」とわからないまでにもおぼろげに背景にあるおもしろさを想像しそして、いつかそれに気がつく(かもしれない)のだ。
 そのためには、作り手側の力量が問われる。漫画だとひとりの作者の力量に依存するところが大だが、アニメーションはたくさんのクリエイターが知識や知恵を集めることができる。それは設定であり、脚本であり、キャラクターであり、背景であり、声優であり、音楽だ。その点で、本作はアニメ界のベテランクリエイターに加え、SF作品で知られる円城塔、漫画家の大友克洋、寺田克也、上条淳士などがゲストキャラクターを設定し、それぞれの漫画風の特徴もアニメーションに生かされている。
 本人ではなくても、わたせせいぞうのバブル青春風シーンや、つげ義春のあまりに有名な「ねじ式」のメメクラゲのパロディなどもあったり。声でクリスペプラーがクリスペプラーっぽく登場したり。
 SFとしても、ひも理論や多元宇宙論、低次元高次元宇宙など設定にはことかかない。ギャグ設定では欠かせない、ギャグだけどしんみりさせたり、ほのぼのさせる「まじめ」回もきちんと織り込んでいる。大人たちが金と時間をかけてやりたいことをおもいっきりやっている。最高。

 さて、少しは設定について触れておこう。「スペース☆ダンディは宇宙のダンディである」。彼はこの宇宙でめずらしい宇宙人を捕獲して、宇宙人登録センターに新しい宇宙人として登録することで報奨金を得る宇宙人ハンターなのだ。宇宙船アロハオエ号に乗り、中古の掃除機AIロボットQTをアシスタントに、第一話で捕まえためずらしくも猫型のないベテルギウス星人通称ミャウと3人が起こすドタバタコメディ、ギャグアニメである。ダンディの生きがいは銀河系各地にあるガールズレストラン「ブービーズ」を全店制覇すること。そして、ダンディは理由はわからないが銀河系を二分する一大勢力のゴーゴル帝国に狙われており、天才科学者のゲル博士と助手のビーが常にダンディを探し、追い詰めようとしている。だが何らかの理由でいつもそのもくろみは失敗してしまう。ダンディたちはゲル博士たちの存在に気がつくことはいまだかつてないのであった。
 毎回ゲスト宇宙人やシチュエーションがある。それは見てのお楽しみだ。