新潟県三条市の冬期牛乳休止は、みんなで応援して、「やってみて、考えようよ」です。
個人的意見として
2014.8.14 牧下圭貴
ほとんどの日本人は、牛乳を見ると「カルシウム」と考えます。牛乳はカルシウムの多い食品のひとつですが、同時に、たんぱく質、脂質、ビタミンも豊かな食品です。「牛乳=カルシウム」とは、学校給食と小学校での栄養指導の結果、広がってしまった考え方です。いかに学校給食の影響が大きいか、この事例をみればよく分かります。
その「牛乳」が大きな話題となっています。
新潟県三条市が、2014年12月から3月末までの4カ月間、学校給食での牛乳提供を中止しました。この発表後、日本栄養士会や学校給食栄養士協議会が名指しこそしていませんが、事実上、三条市に対して、牛乳休止の再考を求める声明を出し、また、乳業関係団体も同様の動きをしています。
実は、三条市は、2006年に食育推進計画と行動計画を発表し、その中で、学校給食については完全米飯給食、和食献立の推進、食べる時間の確保(と、そのための4時間目終了厳守)、牛乳の給食時間との分離などを掲げています。そして、2007年度に1週間、牛乳を給食時間とは別に提供する取り組みをしましたが、その際は、ふつうの給食とミルク給食を1日のうちに2回運用するのと同じことになるため、学校の運営管理が難しく、継続を断念されたと聞いています。そういった背景があることは、まず、知っていただきたいと思います。
そもそも、学校給食に牛乳が毎回つけられるようになったのは、第二次世界大戦後、パン(小麦)と脱脂粉乳による学校給食が行われたことと、酪農振興法により国産牛乳を学校給食に飲ませることで、「酪農を振興する」という目的で脱脂粉乳から牛乳に置き換えられてきた経緯があるからです。
そのため、今日でも、学校給食(完全給食)とは、「主食、ミルク、おかず」と定義されており、基本的には牛乳がはずせなくなっています。
たしかに、牛乳を出しておけば、たんぱく質、ビタミン、カルシウムなどで、調理をせずに簡単に摂取させることが可能です。しかし、一方で、牛乳は季節的には残食が多くなりがちです。特に女子児童、生徒の残食は問題があり、いくら提供しても、摂取されなければ栄養にはなりません。おいしく食べられてこその給食です。
全国的には、週に1回程度は牛乳を出さない献立を立てている学校栄養職員がいたり、牛乳に替えて時々お茶を出す自治体もあります。思い起こせば、柑橘が大量に余った時期には、ミカンジュースが牛乳に替えて時々出ていた世代もあるのではないでしょうか?
牛乳は、ひとつの優れた食品に過ぎません。
牛乳がなければ栄養あるおいしい献立が成り立たないという発想こそが、学校給食を狭く、貧しくしていないでしょうか? 牛乳なしでも十分においしく、栄養のある献立は立てられるはずです。むしろ、牛乳を出さない日が多くあっても可能な調理体制、施設、設備、人員、費用をかけられることの方が望ましいのではないでしょうか?
三条市の今回の取り組みは、4カ月、牛乳なしで和食中心の献立を立て、学校給食実施基準にある栄養を満たし、おいしい給食を提供するというとても難しい挑戦です。現場の栄養教職員に話を聞くと、真剣に悩んでいます。調理体制や給食費(食材費)のしばりなど、本当に難しい要請です。
栄養基準に合わせれば、和食とはいえない乳製品たっぷりの洋風献立になるかもしれません。それでは、牛乳を外した意味がなくなるでしょう。
私はこう考えます。ある日は、栄養基準を完全に満たす献立を立ててみれば良いし、ある日は、栄養基準に足りなくても、おいしさや和食献立に徹底して取り組めば良い、と。そして、献立の意図、栄養量、調理の難しさ、子どもたちの反応、残食数などを毎日きちんと記録し、結果としてそれこそカルシウムが基準を満たしていなければ、そのことを保護者にも伝えればよい、と。
そうして、牛乳ありの給食献立と、牛乳なしの給食献立で、その献立の中身、教育力、おいしさ、残食などをちゃんと見比べ、みんなが学校給食のこれからのあり方を考える材料にすればいいのです。
そもそも、学校給食の栄養基準は、カルシウムならば1日摂取量の半分となっており、多めに設定されています。牛乳がはずしにくい理由が栄養基準の考え方にもあるわけです。
牛乳を抜いたら、その分の栄養がゼロになるわけではありません。栄養教職員もいろんな工夫をすることでしょう。この夏期期間も、きっと献立開発にみんなで苦労していることと思います。その工夫こそが、未来の学校給食の質を高めると思います。
それを全国の栄養教職員や調理員、行政関係者、保護者、市民が一緒に考え、より学校給食の教育としての質が高まるよう考える材料にすればいいのです。
三条市の取り組みは、頭ごなしに否定する話ではないと思います。
私は、牛乳を否定するものではありません。お米と稲作の運動はしていますが、学校給食の完全米飯給食を進めたいとも思っていません。学校給食の自由度を高め、教育力を上げて欲しいだけです。
牛乳を聖域化するのをやめても、地域によっては毎日牛乳を出すところがあるでしょう。給食は米飯だと決めるところもあるでしょう。それは、地域の選択です。
その選択を、尊重することができませんか?
そうして、現場の栄養教職員や調理員、教員らの取り組みをみんなで応援しませんか?
日本ではじめてのことをやるのです、温かく見守って欲しいと思います。
ひとつ、三条市に苦言があるとすれば、発表前にもう少し栄養教職員や現場の給食関係者、教育関係者、保護者、市民と議論をして欲しかったということです。
学校給食は、地域の特徴を活かして、自分たちで考えて、決めて良いと思います。
おいしくて、栄養があって、楽しくて、そして、教育力のある、そんな学校給食が行われることを願っております。